健康診断でときどき「中性脂肪の値だけが高かった」という人がいます。特に肥満気味でない人は「太っているわけではないのに、なぜ?」と疑問に思うことが多いでしょう。
この記事では「中性脂肪だけ高い」状態のときに考えられる原因や健康上のリスクを解説します。生活習慣に心当たりがないかどうかを振り返り、対策を始める良いタイミングです。他の部分にまで異常が現れる前に、しっかり確認しておきましょう。
この記事でわかること
・中性脂肪だけが高くても生活習慣病の発症リスクは肥満体型の人とあまり変わらない
・「食生活の乱れ」「アルコール飲料の飲みすぎ」「運動不足」「ストレス」「体質や加齢・薬の影響」が原因で中性脂肪が高くなる
・油の多い肉・炭水化物・アルコールは避けて、青魚や野菜・海藻を食べよう!
「中性脂肪だけが高い」状態とは
まずは「中性脂肪だけが高い」のは身体がどのような状態なのか、詳しく説明します。
中性脂肪(トリグリセライド)とは
「中性脂肪」は体脂肪の主要成分で、毎日活動するためのエネルギー源として人の身体には欠かせません。動物や植物の中に含まれる脂質を食べることで体内に取り込まれます。
食事から摂取した脂質がまず腸で吸収され、肝臓で加工された後に中性脂肪として蓄えられます。したがって脂質を必要以上に摂りすぎると中性脂肪も増加し、肥満や動脈硬化などの生活習慣病を引き起こす要因になります。
中性脂肪の基準値は? それより高いのはどういう状態?
健康診断で計測する中性脂肪の値は「血液中にどれだけ中性脂肪が含まれているか」を示すものです。基準値は「50〜149mg/dL」で、血液1デシリットルあたり150mg以上の中性脂肪があると、いわゆる「血液ドロドロ」状態になりつつあると考えるとよいでしょう。
血液がドロドロだと血管の中で滞留しやすくなり、心筋梗塞(心臓に酸素や栄養分を送る血液が届かなくなり、心不全を引き起こす)や脳梗塞(脳の血管が細くなったり詰まったりして、脳細胞が壊死する現象)などの発生リスクが高まります。
なお「脂質異常症」は、中性脂肪またはLDLコレステロールのスコアが高すぎるときのほか、HDLコレステロールが低すぎるときにも診断されます。
生活習慣病に関連するその他の指標
生活習慣病に関連し、健康診断で明らかになるその他の指標には、「体重」「血圧」「BMI」「腹囲(ウエストサイズ)」「HDLコレステロール」「LDLコレステロール」があります。
BMI
「BMI」は肥満や低体重の判定に用られる指標です。「体重(kg)/(身長(m) × 身長(m)」という数式から算出可能で、「25以上」だと生活習慣病のリスクが高まるとされています。例えば体重65kgで身長が158cm、体重が53kgだとBMI値は「21.2」で、肥満度は「普通体重」の範囲内となります。
腹囲
「腹囲」は腹部のうち一番細い部分の周囲の長さのこと。「メタボリックシンドローム」の診断に用いられ、男性は「85cm」、女性は「90cm以下」が望ましい水準とされています。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
コレステロール値のうち特に着目すべきは「LDLコレステロール」のほうです。いわゆる「悪玉コレステロール」と呼ばれるもので、一般的には中性脂肪の値と連動して高くなる傾向があります。「120mg/dL」以上の結果が出たら気にかけるようにしましょう。さらに「140mg/dL」が脂質異常症のボーダーラインです。
HDLコレステロール(善玉コレステロール)
一方「HDLコレステロール」は余分なコレステロールを回収して肝臓に戻し、動脈硬化を防ぐ効果があることから「善玉コレステロール」と呼ばれています。基準値は「40mg/dL」で、こちらはこれよりもスコアが低い場合が脂質異常症の診断材料の1つになります。
「中性脂肪だけ高い」状態に潜む健康上のリスク
それでは「中性脂肪だけ高い」状態の人がさらされる健康上のリスクとはどのようなものなのでしょうか。
見た目は痩せている「隠れ肥満」…でも生活習慣病リスクは変わらない
「中性脂肪だけ高い」ということは、BMIが25以下、2つのコレステロール値も正常値の範囲内、なおかつ腹囲も大きくなく、多くの人がパッと見ても「太っていない体型」と判断する人であると考えられます。
そのような体型で中性脂肪だけが高い状態は「隠れ肥満」といえるでしょう。外見上は普通、またはやせ型に見えるにもかかわらず、内部的に脂肪が過剰に蓄積している状態です。
もしかすると見た目からわかる皮下脂肪でなく、内蔵脂肪が多くなっているのかもしれません。概して隠れ肥満の人は、自分の健康状態に危機感がまだ芽生えておらず、油断しやすい傾向があります。
ところが心筋梗塞や動脈硬化など、生活習慣病の発症リスクは肥満体型の人とあまり変わりません。
糖尿病などの病気が潜んでいることも
ただし注意しておきたいのが、中性脂肪の増加には他の病気による機能低下が関連している可能性がある点です。
例えば糖尿病。血液中に含まれるブドウ糖濃度が高い状態、すなわち血糖値がずっと高いまま続いているのが糖尿病です。ブドウ糖は小腸で吸収された後、余ったものが肝臓で中性脂肪に変化します。つまり高血糖だと、作られる中性脂肪の量もおのずと増えます。加えて、糖尿病ではインスリンというホルモンの働きも低下します。血糖値を一定に保つのがインスリンの役目ですが、インスリンは脂肪を分解する機能も持っているのです。したがって血糖値が高いと、中性脂肪が増加してしまうのです。
ほかにも、甲状腺機能低下症や膵炎、ネフローゼ症候群といった病気の影響を受けている場合があります。
中性脂肪の数値が高くなる原因
ここからは、別の病気の影響以外で中性脂肪が高くなる原因を確認しておきましょう。
①食生活の乱れ
1つ目の原因は「食生活の乱れ」です。暴飲暴食や食事のバランスの偏りがなかったか、振り返ってみてください。
食べる量だけでなく、内容や食事時間も重要です。油っこいものが増えていたら危険信号です。高い血糖値も中性脂肪の増加につながるため、麺類や丼、パンなど、糖質が高いメニューだけで食事を済ませてしまうのも良くありません。
また早食いや深夜帯の飲食、ダイエット目的でランチやディナーをまるごと抜くのも、健康にとっては好ましくありません。
②アルコール飲料の飲みすぎ
アルコールの摂取量や頻度にも要注意です。飲酒時はおつまみが進んでつい食事量が増えがちなだけでなく、適量を超えるとアルコールが臓器の働きにも悪影響を及ぼします。
肝臓が本来持っている脂質代謝の機能を低下させてしまうのです。
③運動不足
続いては「運動不足」です。デスクワークの長時間労働が多い現代は、起きてから眠るまで「まともに身体を動かす機会がなかった」と感じる人も多いでしょう。
ちょっとした移動でもすぐに車や電車を利用していませんか。運動によってエネルギーを消費すると、蓄えた脂肪が燃焼されます。
しかし燃焼の機会がなければ、中性脂肪は溜まるばかりです。
④ストレス
3つ目は「ストレス」です。イライラや不安を解消するために、甘い菓子や濃い味の食べ物につい手が伸びてしまうという人もいるのではないでしょうか。ストレスは食生活の乱れを引き起こす元凶です。
またストレスを感じているときに分泌される「コルチゾール」ホルモンは、腹部の脂肪を増やすホルモンでもあるのです。
多忙な仕事や無理なダイエット、睡眠不足といったストレス状態が長く続くと、コルチゾールの分泌が活発になってしまうのです。
⑤体質や加齢、薬の影響
ほかにも遺伝などの体質や加齢、服用している薬の影響で中性脂肪の値が高くなることもあります。
中性脂肪を下げるためにできる4つの対策
最後に、中性脂肪を下げるために今すぐ取り組める4つの行動を紹介しましょう。
①規則正しい食事で、脂質のほか糖質にも気を配る
まずは食事の内容を見直すのが第一です。
「お腹が減ったら短時間でがっつり高カロリーな食事を摂り、夜遅くまで画面の前にいて特に動かない」というようなライフスタイルの人は、「1日3食決まった時間に、栄養バランスの整ったメニューを取り入れる」ことから意識し始めてください。
脂質だけでなく、糖質の摂りすぎにも要注意です。脂質の多い部位の牛肉や豚肉のほか、バターやクリームなどの乳脂肪分、インスタントラーメンや菓子パンなどもできるだけ避けましょう。
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②アルコールも控えめに
飲み会が多い人や、ついつい飲みすぎてしまう人は、アルコール量を振り返ってみてください。
中性脂肪は最終的に肝臓で加工され、蓄積されます。肝臓がアルコール分解に手を取られると、それだけ中性脂肪は溜まりやすくなります。
厚生労働省が発表した指針「健康日本21」によると、「節度ある適度な飲酒量」は、1日平均の「純アルコール量・約20g」程度。例えばアルコール度数5%のビールならロング缶(500ml)1本分、7%の缶チューハイなら缶(350ml)1本分。ワインならグラス2杯弱(200ml)、日本酒なら1合(180ml)と覚えておきましょう。
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③積極的に食べたいのは「青魚」と「食物繊維」
逆に中性脂肪を下げる働きがある栄養素が、「n-3系脂肪酸(オメガ3)」です。この脂肪酸は人の体内では合成できず、食事でしか摂取できません。n-3系脂肪酸のうち「α-リノレン酸」を多く含む食材として有名なのは、植物由来の油・アマニ油、エゴマ油です。さらにクルミを筆頭に、ナッツ類にも含まれています。
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ほかに身近なところでは「EPA(エイコサペンタエン酸)」や「DHA(ドコサヘキサエン酸)」もn-3系脂肪酸の1つで、イワシやサバ、サンマ、アジなどの青魚に豊富に含有されています。
いつもの献立で口にしている豚肉や牛肉を青魚に置き換えるのが、まずは取り入れてみやすい方法でしょう。
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また食事の際に野菜や海藻を先に食べると、食物繊維の働きで脂肪の吸収をおだやかにする効果が期待できます。
④定期的な運動を始める
しかし加齢などの要因でも中性脂肪は溜まりやすくなるため、食生活の改善だけで中性脂肪を減らすのはなかなか困難です。
食生活改善にプラスして、運動習慣を取り入れることを忘れてはなりません。脂肪燃焼のためには、定期的な「有酸素運動」の時間を設けるのがベストです。
有酸素運動とは「筋肉に対する負荷が軽〜中程度で、長時間続けられる運動」のこと。1日20〜30分、ウォーキングやジョギングから始めてみてはいかがでしょうか。水泳やサイクリング、エアロビクスもおすすめです。
ちなみに筋肉トレーニング(筋トレ)は有酸素運動と異なり、「筋肉負荷の高い運動によって、身体の基礎代謝を高める」というメリットがあります。そこで筋トレで脂肪を燃焼しやすい身体を作り、さらに有酸素運動で脂肪を燃焼させる、という流れにすると効率的。よりスピーディーに結果を出したい人は、筋トレと有酸素運動を組み合わせて取り組みましょう。
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BMI値やコレステロール値が適正範囲であるにもかかわらず「中性脂肪だけ高い」状況の人は、隠れ肥満の可能性があります。
食生活に偏りがなかったか振り返ってみて、もし心当たりがあれば、他の指標に異状がないうちに改善に取り組んでみましょう。
規則正しい生活、バランスの取れたメニュー、定期的な運動習慣を3本柱に、健康的な生活を目指しましょう。