中性脂肪は、体内で脂肪として貯蔵される重要なエネルギー源です。しかし、増えすぎた中性脂肪は、心疾患などの健康問題のリスクを増加させる可能性があります。

健康診断などで中性脂肪が高いと指摘された方におすすめしたいのが「トマトジュース」。

今回はトマトジュースの栄養素を解説し、中性脂肪にもたらす効果や、健康への良い影響を紹介します。

トマトジュースが中性脂肪に与える影響

トマトジュースには、栄養素が豊富に含まれており、健康維持・増進に効果があります。
その中の一つが、中性脂肪を低下させる働きです。

トマトジュースが中性脂肪の減少に対して効果的であるということは、研究でもわかっています。

研究でも判明「中性脂肪」の燃焼に効果あり!

2015 年に国際栄養学雑誌 Nutrition Journal(オンライン版)で発表された研究では、成人女性が 200mL のトマトジュースを1日2回朝夕食前に摂取することにより、4週間後および8週間後にエネルギー消費量が増加し、血清中性脂肪高値が改善することが明らかになりました。

この研究結果は、トマトジュースが中性脂肪を減少させるという効果を、世界で初めて人間で明らかにしたものです。[参照1] 

そのほかにもマウスでの研究では、トマトジュース中に脂肪燃焼作用に効果的な成分が多く含まれていることがわかっています。[参照2] 

このように、トマトジュースには中性脂肪減少に効果的であるというエビデンスがしっかり確立しているのです。

トマトジュースに含まれる主な栄養素と働き

では、トマトジュースにはどんな栄養素が含まれているのでしょうか。ここではトマトやトマトジュースに含まれる主な栄養素と、その働きを紹介します。

リコピン

トマトに含まれる代表的な栄養素がリコピンです。

リコピンは強力な抗酸化作用を持っており、細胞や組織を酸化ストレスから保護する役割を果たします。

リコピンは光線や熱に対しても安定しているため、トマトジュースなどに加工したり調理の過程でも損失しにくいという特徴があります。また、リコピンは脂溶性であるため、油脂と一緒に摂取することで吸収が向上します。

ビタミン

トマトジュースにはビタミンも豊富に含まれています。

特に、ビタミンAやビタミンC、ビタミンE、葉酸が豊富で、リコピン同様、抗酸化作用を持っています。

  • ビタミンAは、目や皮膚の粘膜を健康に保つ働きを持ちます。
  • ビタミンCは骨や腱などのコラーゲンの生成に必要な栄養素です。血管や皮膚、骨などの組織を健康的な状態に保つのに役立ちます。
  • ビタミンEは、強い抗酸化作用を持ち、動脈硬化の予防や、血圧の低下、悪玉コレステロールの減少などに働きます。
  • 葉酸は赤血球を作るのに必要な栄養素。妊婦さんが積極的に摂取したい栄養素として有名です。そのほかにも、たんぱく質の合成を促し、細胞の再生を助けます。

ミネラル

トマトジュースにはビタミンのほかにも、体の維持に欠かせないミネラルを多く含んでいます。

  • カリウムは、人体に欠かせないミネラルの一種。体内の水分バランスや血圧の調節に重要な役割を果たします。また、ナトリウム(塩分)を排出する作用があり、塩分の取りすぎを調整する働きを持ちます。
  • マグネシウムは、骨の形成やエネルギー生産、筋肉の収縮・弛緩、神経機能の調節などに重要な役割を果たします。

マグネシウムが不足すると、高血圧や不整脈などの影響を及ぼす場合もあります。

中性脂肪だけではない、トマトジュースを飲むメリット5選

トマトジュースには、中性脂肪だけでなく健康維持・増進のための様々な良い効果があります。ここではトマトジュースを飲むことによって得られるメリットを紹介します。

①抗酸化作用

抗酸化作用とは、体内で発生する活性酸素を除去する働きのこと。活性酸素を抑えることで、悪玉コレステロールの酸化を防ぎ、血流を促します。血流を改善することで血圧を下げたり動脈硬化や心筋梗塞を防ぐだけでなく、活性酸素を抑えることで、がんを予防する可能性もあります。

体に備わっている抗酸化能力は、加齢によって弱くなっていきます。それとともに仕事でのストレス、喫煙、禁煙なども活性酸素が増える原因になり、体を老化させる原因にもなっています。

トマトジュースにはリコピンやビタミンなど抗酸化物質が豊富に含まれており、中性脂肪の減少だけでなく、体のアンチエイジングにも効果的です。

②悪玉コレステロールの低下

悪玉コレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ役割を担っています。

名前に「悪玉」と書かれているので、悪いもののように取り扱われますが、実は必要不可欠な成分なのです。

ただし、この悪玉コレステロールは増えすぎると、動脈硬化や脳梗塞、狭心症などの様々な疾患を誘発します。

リコピンには、悪玉コレステロールを低下させる働きを持つうえ、血中の善玉コレステロールを増やす働きもあり、血中コレステロールのバランスをとる働きをします。

③血圧の改善

リコピンの抗酸化作用やコレステロール値の改善によって血管の機能を正常に保ち、血圧の改善にも役立ちます。

また、トマトに含まれるGABA(ギャバ)には、高めの血圧を低下させる機能が報告されています。

④心臓の健康

高血圧や糖尿病、肥満など心臓に負担をかける体の状態が続くと、動脈硬化を引き起こします。動脈硬化は、狭心症や心筋梗塞、動脈瘤などの心臓の大きな疾患につながるリスクが高まります。

トマトジュースに含まれるリコピンやGABA、ビタミンなどによって高血圧やコレステロール値をコントロールすることで、心疾患の予防につながります。

⑤整腸効果・消化促進

トマトジュースには食物繊維が含まれており、整腸効果もあります。食物繊維には余分な脂肪や糖、塩分を排出してくれる効果もあり、上記のような高血圧や糖尿病などを予防することにも役立ちます。

また、トマトジュースに含まれる酸が胃酸の分泌を促すため、消化を促進したり、胃酸過多の症状を緩和します。

トマトジュースを飲むうえで気を付けたいこと

様々な効果のあるトマトジュースですが、飲むうえで気を付けておきたいこともあります。ここではトマトジュースの効果を引き出すためのポイントを紹介します。

塩分や糖質に気を付ける

トマトジュースには、飲みやすくするために塩分を増やしている商品もあります。塩分量が多いトマトジュースを飲みすぎると、塩分過多になる場合もありますので注意しましょう。

また、塩分だけでなく、糖質もチェックしてみましょう。トマトジュースは手軽に摂取できる反面、糖質も含まれているため、飲みすぎると糖質を摂りすぎてしまうことも。

ダイエット中などにトマトジュースを活用しようと考えている方は、糖質量をしっかりチェックして、飲みすぎにないように気をつけましょう。

種類から選ぶ

様々なトマトジュースが販売されていますが、それぞれ違いがあります。その違いをしっかりチェックしてみましょう。

トマトジュースの種類は、大きく分けて2つ。「ストレートタイプ」と「濃縮還元タイプ」です。

ストレートタイプは、搾ったトマトの果汁を殺菌し、水分を加えずにそのまま商品にしたもので、生のトマトの味・香りに近いトマトジュースです。

よりトマトに近い味でトマトジュースを飲みたいという方におすすめです。

濃縮還元タイプは、トマトの果汁から水分を取り除きペースト化したまま保存し、製造する際に再度水分を加える製法で作るトマトジュースです。

濃縮還元タイプは水分を飛ばすために熱を加えるため、熱に弱い栄養素が失われたり、飲料化する際に砂糖や添加物が使われる場合がありますが、ストレートタイプと栄養素が大きく異なるということはありません。何より、ストレートタイプに比べ値段が安く、長期的に摂取しやすいというのもポイントの一つです。

どちらが優れているということはありませんので、栄養素の含有量や味、値段などをチェックして自分に合うトマトジュースを探してみましょう。

栄養素にこだわるなら機能性表示食品を

トマトジュースの中には、機能性表示食品として効果が表示されているものもあります。

機能性表示食品とは、その食品が科学的根拠に基づき、その効果を得ることができるということを消費者庁に届け出された商品のことです。

トマトジュースにも「血圧を下げる」や「善玉コレステロールを増やす」などの表記がされている機能性表示食品があります。

安全性が高くより効果が高いものを飲みたい!という方は、機能性表示食品の中から選ぶのも良いでしょう。

また、商品によっては栄養素の含有量や添加物の配合など、細かな違いもあります。

トマトジュースの中には、代表的な栄養素であるリコピン含有量が多い「高リコピン」トマトジュースも販売されていますので、商品を購入する際にリコピンの含有量をチェックしてみるのも良いでしょう。

継続するには味も大切

いくら機能性表示食品や高リコピントマトジュースでも、1回限りの摂取では効果を実感することはできません。継続して摂取していくことが大切なのです。

その際に重要なポイントが「味」。いくら効果が高くても、味が苦手で飲みづらい商品は長続きしません。

トマト好きな方なら、生のトマトに近い味がいいでしょうし、トマトが苦手な方であれば、トマト以外の果汁も含まれていて飲みやすくなっているものが良いでしょう。

このように、自分の好みの味のトマトジュースを見つけて、継続して摂取することが効果を出すポイントです。

健康状態によっては医師に相談して

健康に良いトマトジュースですが、健康状態によっては、気をつける必要があります。

特に腎臓の機能が低下している場合は注意が必要です。トマトジュースに含まれるカリウムが排出されにくく、血中カリウムを増やしてしまう可能性があります。

健康な人は全く問題ありませんが、基礎疾患などがある方は、一度医師に相談してから摂取するようにしましょう。

トマトジュースだけでなく、運動や食事管理も並行して

トマトジュースにはいろいろなメリットがありますが、飲むだけではその効果を最大限に得ることができません。

中性脂肪を減らすためには、運動や食事管理も大切です。

中性脂肪の数値が高いということは、エネルギー過多であるということ。血中でエネルギー消費しきれず、余ったエネルギーが肝臓で中性脂肪になっているのです。

消費エネルギーを増やせば、中性脂肪の生成を抑えることができるうえ、エネルギーが不足した際に中性脂肪がエネルギーとして使われます。中性脂肪を減らすには、手軽に取り組め、エネルギー消費量が多いウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が効果的です。

また、エネルギーの摂りすぎを改善するために、食事管理にも取り組みましょう。

食事量を少し減らしたり、甘いものやお酒の摂取量を少なくするなどでも、中性脂肪を減らすことにつながります。

運動や食事管理にプラスして、トマトジュースを活用することで、中性脂肪を効率よく減少させることができるでしょう。

まとめ

トマトジュースには中性脂肪を減らすだけでなく、健康維持・増進に関する様々な効果があることがお分かりいただけたと思います。

ただし、トマトジュース単体で中性脂肪を劇的に減少させることは期待できません。中性脂肪の管理には、総合的なアプローチが必要です。バランスの取れた食事管理、適切な運動、ストレスの管理などが重要です。

その中の一つとしてトマトジュースを活用し、効果的に中性脂肪を減らしましょう。

 [参照1]https://www.joseikenko.com/images/top/150601.pdf
 [参照2]https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/archive/prev/news_data/h/h1/news6/2011/120210_1

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