「中性脂肪」や「コレステロール」はメタボリックシンドロームにつながる要因として、医師から指導されることも多い項目です。年代が上がるにつれて関心が高くなる項目でもあります。

健康診断結果は自身の食生活を振り返る絶好のチャンス。とはいえ、現在の食生活のどこが悪いのか、下げるには何を食べたらよいのか、わからない人も多いはず。
そこで、今回は中性脂肪やコレステロールへの理解を深めたうえで、中性脂肪値やコレステロール値を下げる方法を詳しく解説します。

脂質検査で何がわかるの?

多くの人が受ける健康診断では「脂質検査」は必須検査です。血液を採取して血液中の脂質の濃度を調べる検査です。動脈硬化をはじめさまざまな疾患の可能性がわかります。

脂質検査で測定する項目と基準値

脂質検査で、一般的に検査されるのは次の3項目。

  1. LDLコレステロール
  2. HDLコレステロール
  3. 中性脂肪

中性脂肪やコレステロールなどの脂質は水に溶けにくい性質です。全身へ供給されるべく血液中を流れるために、他の物質と組み合わさって「リポタンパク質(Lipoprotein)」と呼ばれる粒子となります。リポタンパク質は比重や大きさによって分類されており、中でも注目されているのは、LDL(低比重リポタンパク質)とHDL(高比重リポタンパク質)です。

測定される項目を、詳しくみていきましょう。

1.LDLコレステロール(LDLに含まれているコレステロール)

LDLは脂質を肝臓から全身に運ぶ役割を担います。必要なコレステロールを組織に届け、不要なコレステロールを肝臓へと戻します。LDLコレステロールが増えすぎると動脈硬化を促進させる原因となります。

LDLコレステロールの基準値:60〜119mg/dL

2HDLコレステロール(HDLに含まれているコレステロール)

HDLは血液中の余分なコレステロールを回収して肝臓へ運ぶ役割をしています。HDLが多ければコレステロールの処理がスムーズに行われ、動脈硬化のリスクが低くなります。

HDLコレステロールの基準値:40〜119mg/dL

3中性脂肪(LDLやHDLも含めたリポタンパク質全体に含まれる中性脂肪)

中性脂肪はエネルギー原料や身体を守るクッションの役割を担います。血液中の中性脂肪が増えるとコレステロールのバランスを崩し、間接的にさまざまな疾患を引き起こす原因となります。

中性脂肪の基準値:30〜149mg/dL

その他「総コレステロール」や「Non-HDLコレステロール」なども検査項目に含まれることがあります。

中性脂肪やコレステロールは「体に悪いもの」?

さまざまな疾患を引き起こす要因となる脂質、中性脂肪とコレステロール。しかし、本当に中性脂肪やコレステロールは「体に悪いもの」なのでしょうか。

中性脂肪とコレステロールがどのようなものなのか、詳しく解説します。

中性脂肪とは

身体にある脂質の1つで、中性脂肪は重要なエネルギー源です。主なエネルギー源である糖質が不足すると中性脂肪が活動の燃料として使われます。

食事によって摂取された脂質は中性脂肪として血液中を流れ、身体じゅうに運ばれます。すぐに使用されない中性脂肪は、いったん体内に貯蔵されます。

皮膚と筋肉の間に蓄えられる中性脂肪は「皮下脂肪」、内臓の周りに蓄えられる中性脂肪は「内臓脂肪」と呼ばれます。蓄えられた中性脂肪は、外的刺激から身体を守ったり適正な体温を維持したりするなど大切な役割を担っています。
皮下組織や内臓に貯蔵されるのは、エネルギー源として使用されない中性脂肪。摂取と消費のバランスが崩れると、蓄積される中性脂肪が増えて、脂質異常症になるリスクが高まってしまうのです。

コレステロールとは

コレステロールは身体にある脂質の1つで、細胞膜を構成する成分であり、ホルモンや胆汁酸などの原料にもなっています。

食事やサプリから摂取されるコレステロールは20〜30%程度。体内で使われるコレステロールの70〜80%は糖分や脂質から主に肝臓で合成されています。

コレステロールを過剰に摂取すると、合成する量を減らし、余分なコレステロールは体外へ排出されます。体内のコレステロール量は一定に保たれています。

摂取、合成されたコレステロールはLDLやHDLなどの「リポタンパク質」と呼ばれる粒子となり、身体じゅうに運ばれます。LDLの働きは、肝臓から身体じゅうの組織へコレステロールを運ぶこと。一方、HDLは身体じゅうの組織から使われなかったコレステロールを回収し、肝臓に戻す働きをしています。

なぜ、LDLコレステロール=「悪玉」、HDLコレステロール=「善玉」?

LDLコレステロールが「悪玉コレステロール」、HDLコレステロールが「善玉コレステロール」と呼ばれる理由はLDLとHDLの性質にあります。

血液を通って体の各組織へ運ばれるLDLは、細胞壁の修理やホルモンの合成などの材料として、コレステロールを必要とする組織でコレステロールを供給します。一方、組織に必要とされなかったコレステロールはLDLに含まれたまま、再び肝臓へ戻ります。

必要以上のコレステロールが体内にあると、コレステロールを含んだままのLDLが数多く血中を流れます。LDLが血管の壁に付着すると、プラークと呼ばれるコブが形成され、血液の流れは悪化します。

さらにプラークは、血栓の原因や血管が柔軟性を失う原因となり、動脈硬化をはじめさまざまな疾患のきっかけになります。動脈硬化の進行を促進するLDLコレステロールは「悪玉コレステロール」と呼ばれるのです。
一方、HDLは組織で使われなくなったコレステロールや血管壁に付着したコレステロールを取り込みながら、肝臓へと戻っていく働きです。余分なコレステロールを回収してくれることから「善玉コレステロール」と呼ばれているのです。

中性脂肪やコレステロールは「体に悪いもの」ではない!

体内にある脂質中性脂肪やコレステロールは、人が生きていくために必要な物質です。

しかし脂質やコレステロールを過剰摂取すると、LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」と呼ばれ、「中性脂肪やコレステロールは体に悪い」とのイメージができてしまうのです。
摂取と消費のバランスが取れていれば、中性脂肪もコレステロールも決して悪いものではありません。

詳しく解説!中性脂肪値を下げる方法

中性脂肪は増えすぎるとLDLコレステロールを増やす原因となり、さまざまな疾患を引き起こす要因になりかねません。

ここでは、食生活における中性脂肪を適正な基準値に下げる方法を紹介します。

中性脂肪値を下げる効果のある成分

中性脂肪は腸で吸収されたり、肝臓や小腸で合成されたりする物質。中性脂肪値を下げるには、「体内での合成を抑制する」「吸収されにくくする」などの働きを持つ成分が有効です。
また、体内で合成される時には糖質が材料として使用されるため、中性脂肪値を下げるには糖質摂取の抑制も考慮する必要があります。

①EPA(エイコサペンタエン酸)

EPAは体内で合成できない「不飽和脂肪酸」のひとつです。EPAには次の働きがあり、積極的に摂取することで中性脂肪値の低下が見込めます。

  • 肝臓から血液中に中性脂肪が出ていくことを抑制
  • 血液中の中性脂肪の消失を促進
  • 肝臓の中性脂肪を減少

②ポリフェノール

抗酸化作用があることで有名なポリフェノール。中には食後の中性脂肪値上昇を抑える働きをするものもあり、注目されています。ポリフェノールは脂質の分解を抑制します。脂質はポリフェノールによって小さな粒子まで分解されず、吸収されにくくなるのです。

③食物繊維

海藻やきのこなどに多く含まれる食物繊維は、腸内で脂質が吸収されるのを抑制する働きをします。食物繊維は消化に時間がかかるため、脂質や糖質を摂取する前に食べるのが効果的です。脂質や糖質の消化・吸収を穏やかにし、過剰な摂取を抑制してくれます。

中性脂肪値を下げる効果のある食品

中性脂肪値を下げる成分が豊富に含まれる、代表的な4つの食品を紹介します。

①魚

魚介類、特に青魚にはEPAが豊富に含まれています。中性脂肪値が気になる人は1日1回の魚料理がおすすめです。缶詰やレトルト食品などを上手に活用するとよいでしょう。

②海藻やきのこ、野菜

食事はまず海藻やきのこ、野菜などの食物繊維を先に食べましょう。脂質や糖質の吸収が穏やかになり、食後の血糖値上昇を抑制します。また海藻にはポリフェノールも含まれているため、脂質の吸収を抑制する働きも期待できます。

③大豆

大豆製品には植物性たんぱく質が多く含まれており、血液中の中性脂肪を減少させる働きがあります。他にも大豆には、ポリフェノールやαリノレン酸など、中性脂肪値を減らすさまざまな成分が多く含まれているのです。

④アマニ油・エゴマ油

アマニ油やエゴマ油に含まれる「αリノレン酸」は不飽和脂肪酸の1つで、EPA同様、中性脂肪値を下げる効果があります。αリノレン酸は食品油の他、くるみや大豆製品などにも含まれています。

中性脂肪値を下げる効果のある飲み物

中性脂肪値を下げる効果があるポリフェノールは、さまざまな飲み物に含まれている成分。赤ワインで知られるアントシアニンはもちろん、カテキンや大豆イソフラボン、ルチンなどもポリフェノールです。

  • 赤ワイン
  • 緑茶
  • 紅茶
  • ココア
  • コーヒー

その他、リコピンやGABAも中性脂肪を下げる効果があるので、トマトジュースやギャバ茶などもおすすめです。食事だけでなく、飲み物にも意識を向けると、より効率よく中性脂肪値を下げられるでしょう。

コレステロールはバランスが大切!

そもそも人には必要不可欠なコレステロールを一定量に保つ仕組みが備わっています。余剰なコレステロールが発生しないように、良好なバランスを維持することが大切です。

コレステロールのバランスを整えるには

血液中のLDLとHDLのバランスが良ければ、体内のコレステロールは一定量に調整されるはず。そこで問題となるのは「食事で増えるコレステロール」です。この量が過剰になると、調整できなくなり、LDLが「悪玉」と呼ばれる物質へと変化してしまうのです。

摂取するコレステロールを減らしたり、コレステロールの吸収を抑制したりすることでバランスを整えましょう。

①LDLコレステロール値が上がる食品を控える

LDLコレステロール値を上げる食品の代表的なものは「飽和脂肪酸」や「トランス脂肪酸」を多く含む食品です。

  • 肉の脂身
  • 揚げ物
  • バターやクリーム
  • 菓子類 など

卵や魚卵にはコレステロールが多く含まれますが、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を含む食品に比べれば、コレステロール値への影響は小さいです。

LDLコレステロール値が高い人は、間食を減らす、洋食から和食に変えるなどの工夫が必要でしょう。

②コレステロール値を下げる成分

過剰なコレステロールが体内に貯まらない働きをする成分を紹介します。積極的に食事に取り入れましょう。

DHA(ドコサヘキサエン酸)

魚、特に青魚に多く含まれるDHAは、脳の働きを活性化させる成分として有名です。EPAと同じ不飽和脂肪酸なので、血液中のコレステロール値を下げる働きもあります。

食物繊維

食物繊維はコレステロールのバランスを整える効果のある成分です。中でも水溶性食物繊維には吸着性があり、小腸でコレステロールを吸収して体外へ排出しやすくする働きがあります。水溶性食物繊維には胆汁酸を体外に排出しやすい働きも。胆汁酸が体内で不足するとその原料であるコレステロールが消費されるため、さらに体内のコレステロールを減らせます。

大豆

大豆に含まれる大豆タンパク質は、脂質が小腸で吸収されるのを抑制する働きがあります。大豆タンパク質によりコレステロールは吸収されにくい状態となり、そのまま体外へ。結果として血中に含まれるコレステロールは減少するのです。

コレステロールを下げるサプリは効果あり?

食生活の改善がなかなか難しい人におすすめなのがサプリメント。「補助的」食品として効果が期待できます。

しかし市場には、数多くの魅力的なサプリメントがあるので、どれを選んだら良いか、迷ってしまいますよね。口コミや評判を参考にするのがおすすめ。サプリメントを選んだら、数ヶ月は続けるようにしましょう。中長期的な視点で効果を評価するのがポイントです。
サプリメントを有効活用するには、「現在の食生活で何が不足しがちか」をきちんと把握しましょう。サプリメントの商品説明や含有成分を丁寧にチェックして、不足している成分を効率的に補えるサプリメントを選びましょう。

他にもある!中性脂肪とコレステロールを下げる方法

中性脂肪値やコレステロール値を適正な値に保つ方法は、食生活の改善以外にもあります。日々の生活スケジュールや嗜好(しこう)にあった方法を選びましょう。

運動

食事によって摂取された脂質や糖質が皮下組織や内蔵に貯蓄される前に、身体を動かして燃焼してしまいましょう。運動によって筋肉量が増えることで基礎代謝量が増え、同じ食事をしてもエネルギーが燃えやすい身体になっていきます。

仕事に追われる多忙な日々、運動に多くの時間をかけることが難しい人もいるでしょう。1日数回ゆっくり腹式呼吸を繰り返すだけでも、エネルギーは燃焼します。

  • エスカレーターやエレベーターの代わりに階段を使う
  • 電車やバスを1駅前で下車、1駅分を歩く
  • 休みの日にゆっくりストレッチする

普段運動しない人は、少しの時間を積み重ね、身体を動かす習慣を身につけることから始めましょう。

生活習慣

食事で摂取した栄養が効率よく使われ、余分なものがスムーズに排出されるためには、日々の生活習慣の見直しも大切です。

1日の食事は朝ごはんから!

活動する前に食事をすると、エネルギーとして使われやすいため、余剰な糖質や脂質の発生を抑えます。

朝ごはんや昼ごはんは、主食・主菜・副菜とバランスよく食べましょう。活動量が減る夕食は、脂質や糖質が多い食事は避けると、中性脂肪やコレステロールが貯まりにくくなります。

外食が多い人やアルコールを飲む機会が多い人は、他の日や他の食事でバランスが取れるように工夫しましょう。

喫煙

タバコに含まれるニコチンには、中性脂肪が合成されやすくなる働きがあります。また糖質や脂質の代謝にも影響があります。空腹を紛らわすために「タバコで一服」では、何も改善されません。タバコが吸いたくなったら緑茶やコーヒーを飲んだり、深呼吸して吸いたい気持ちを抑えましょう。

喫煙が習慣になっている人は、まずは喫煙本数を減らすように心がけましょう。

飲酒

肝臓はアルコールを分解する組織です。アルコールは肝臓内のさまざまな酵素に影響を及ぼし、中性脂肪を次々と合成します。梅酒、日本酒、ビールなどの糖質を多く含んだお酒を飲めば、中性脂肪の合成はさらに加速します。
休肝日を設けてもアルコール摂取量が減らなければ改善されません。全体のアルコール摂取量を抑える、焼酎やウイスキーなど糖質の少ないお酒を選ぶなどで、中性脂肪値を下げる効果が期待できるでしょう。

まとめ

中性脂肪値やコレステロール値を下げる成分や食品、飲み物について紹介しました。中性脂肪とコレステロールはどちらも身体に必須の物質です。一方、過剰に摂取すると代謝とのバランスが崩れ、生活習慣病の原因になってしまいます。

仕事や家事に追われて過ごしていると、気づかないうちに貯まってしまいがちです。大病につながらないよう、中性脂肪やコレステロールの数値を定期的にチェックする必要があるでしょう。

食事の内容や生活リズムを改善するには、精神的ストレスがかからない「少しの工夫」が有効です。焦らず、「改善には貯め込んだ期間と同じ時間がかかる」と覚悟して、じっくり対処していきましょう。

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