「食べても食べても、もの足りない。この食欲、どうにかならない?」
と悩む人に、食欲を抑えるおすすめの食べ物を紹介します。
食欲の正体を知り、上手にコントロールしましょう!

この記事でわかること
・食欲は空腹時だけでなく、睡眠不足や食事のバランスの偏りが原因になることもある
・良質なタンパク質・食物繊維・低GI食品を積極的に摂ろう

食欲コントロールの仕組みを知ろう!

食欲とは、文字どおり「食べたい」欲求のことで、人間にとって最も重要な欲求の一つです。食欲がなくなってしまえば栄養不足となり、食欲が抑制できなければ過食状態となり、コントロールできなければどちらにしても命を脅かす原因になってしまいます。

食欲がどのようにコントロールされるのか、食欲コントロールの仕組みを詳しく解説します。

食欲をコントロールする2つのホルモン

食欲をコントロールする代表的なホルモンはグレリンとレプチンです。この2つの相反する働きを持つホルモンはシーソーのように、一方が減れば一方が増えることでバランスを保っています。

2つのホルモンそれぞれの働きを解説します。

①食欲を促すグレリン

グレリンは食欲を促すホルモンの代表格です。摂食ホルモンと呼ばれ、胃が空腹状態になると分泌されます。グレリンが分泌されることで、脳から全身に「今、食べるべき!」の指令が送られ、早く栄養補給できるよう身体全体が動き始めます。

体内の栄養が不足すればいずれ死に至るのですから、グレリンの分泌はとても重要です。グレリンは食事の直前に分泌量が最大になりますが、それ以外に睡眠不足によって分泌量が増えることが知られています。
胃の空腹状態に関わらずグレリンが分泌されてしまうと、食欲がコントロールできず、過食状態になってしまいます。

グレリンの他にもドーパミンをはじめ、数種類の食欲を促すホルモンが体内では分泌されており、私たちの食欲はさまざまな要因で生み出されているのです。

②食欲を抑えるレプチン

満腹ホルモンとも呼ばれるレプチンは、脂肪細胞の状態を監視しており、脳に脂肪の状態を伝達します。脂肪細胞に脂肪が溜まり始めるのは、余剰な糖が血中を流れている証拠。脳がレプチンからのシグナルを受け取ると「満腹!」と判断し、食欲が減り、食べ物を見てもあまり食べたいと思わなくなります。

脂肪細胞が多ければそれだけ食欲が抑制されそうですが、レプチンのシグナルを受け取る脳内システムは、体脂肪が多すぎると正常に働かなくなるのです。
そのためレプチンの食欲抑制の機能を十分に発揮させるには、適量の体脂肪を維持する必要があります。

またレプチンの他、インシュリンやセロトニン、その他のホルモンにも食欲を抑える働きがあります。

空腹と関係ない食欲もある!

季節の変わり目や行事・イベントなど、さまざまな食べ物が美味しくてついつい食べ過ぎてしまう人もいるのではないでしょうか。食生活が豊かになった現代だからこそ、悩める食欲があるのです。

グレリンやレプチンなど、食欲を司るホルモンは空腹以外にもさまざまな要素に影響を受け、分泌量が変化します。

どのような要因で食欲コントロールが難しくなるのか、詳しく解説していきます。

空腹と関係ない食欲とは

グレリンは基本的には胃の状態によって分泌されるホルモンです。しかしグレリン以外の食欲を促すホルモンの中には、空腹と関係なく分泌されるものもあります。

一方、レプチンの分泌量は脂肪細胞の状態以外にもさまざまな要因に影響され、満腹感が感じにくい状況を生み出してしまうのです。

「さっき食べたばかりなのにもうお腹が空いている気がする。」
「何か、口にしないと落ち着かない。」

空腹と関係ない食欲こそがダイエットに励む人の最大の敵であり、私たちの健康を脅かす欲求なのです。

空腹と関係ない食欲を生み出す4つの要因

空腹と関係ない食欲はさまざまな要因によって生み出されます。食欲の仕組みは完全には解明されていませんが、主な要因を4つ紹介します。

①過去の経験や楽しい気分

「美味しい」と感じた経験に基づく食欲はとても強く、満腹を感じるホルモンでは抑制できないほどです。好きなものや美味しいものを食べた時の記憶は、時間が経っても、同じ場所に行ったり同じ香りを嗅いだときにふと蘇りますよね。

香りや視覚的情報によって脳が刺激を受けると、過去の食の記憶と結びつき、食欲を促すホルモンが分泌され、「食べたい」と思ってしまうのです。

また嬉しいことがあると脳内にはドーパミンが分泌されます。ドーパミンには食欲を促す働きがあるため、楽しい気分になっている時は食欲も旺盛。楽しくどんどん食べられるでしょう。

この食欲は生きるためのエネルギーを摂るためではなく、快感を味わうための食欲なので、抑えるのは簡単ではありません。

②睡眠不足

睡眠不足は日中に眠気を引き起こし、生活や仕事に支障をきたすものです。さらに体内のホルモン分泌や自律神経のバランスにも支障をきたします。

数時間しか寝ない状態が2日続くだけでも、レプチンの分泌は減少し、一方でグレリンの分泌が促進されることが知られています。

慢性的な睡眠不足により過食状態が続くと、体脂肪が増えていきます。体脂肪が多くなるとレプチンのシグナルを受け取る脳内システムが働かなくなり、満腹感を感じにくい体質になってしまうのです。

多忙の日々の中でも、睡眠不足が連続しないようなスケジュール管理が食欲をコントロールする上でも必要と言えるでしょう。

③食事のバランス

食事の量は十分でも、摂取する栄養素のバランスに偏りがあると食欲コントロールは正常に機能しません。特に食物繊維が不足し、糖質が多い食事には注意が必要です。

食事をすると、血糖値を調整するため体内にはインシュリンが分泌されますが、インシュリンには食欲を抑制する働きもあります。食べたすぐ後に食欲が沸かないのはこの働きのおかげです。

ところが糖質が多い食事が続くと、多く分泌されるインシュリンに身体が正常に反応しなくなるので、食欲の抑制機能が効かなくなります。

また食物繊維は食後血糖値の上昇を抑える働きがあり、過剰なインシュリンの分泌を抑制できます。食物繊維を多く含む食事はよく噛む必要があるので、満腹感を感じやすいとのメリットもあります。

甘いものや脂質の多いものは「美味しい」と感じやすく、食欲が増大しやすい食事です。栄養のバランスを整えることで、体内のホルモンが正常に働き、空腹に関係ない食欲を抑制できます。

④心身のストレス

ストレスも食欲が抑えられない要因の一つです。ストレスを感じると、さまざまなホルモンが分泌されストレスから心身を守ろうとします。ストレスに対抗するホルモンの作用で、食欲を抑制するホルモンが影響を受けてしまうのです。

「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンは心身の状態を穏やかに正常にするホルモンで、食欲を抑える働きもあります。ストレスによって分泌量が減少してしまうと精神的不安を感じ、食欲も出やすくなります。

ストレスを溜め込まず、小さなうちに解消すれば、止まらない食欲に悩むことはありません。

食欲を抑える食べ物はコレ!

空腹と関係ない食欲を抑えるには食べたい気持ちを我慢するしかない、と思っていませんか。

空腹と関係ない食欲を抑えるには、しっかり食べることがポイントなのです。バランスの取れた食生活によりホルモンがバランスよく分泌されれば、過食になることもなく体調が大きく崩れることはありません。

ここでは、食欲を抑えるおすすめの食べ物を3つ紹介します。

良質なタンパク質

食欲を抑える食べ物の代表はタンパク質です。タンパク質に含まれる酵素の働きによってグレリンの分泌が抑えられ、反対にレプチンが分泌されます。

またタンパク質は炭水化物に比べ、エネルギーが生まれやすく、食後血糖値の上昇が緩やかなることも食欲を抑えるには効果的です。

タンパク質はさまざまな食べ物に含まれる成分なので、間食にも取り入れることもできます。

【タンパク質を多く含む食材】
牛肉・豚肉・鶏肉・魚・卵・チーズ・豆腐・納豆 など

食物繊維

食物繊維が多く含まれる食べ物は、よく噛んで食べる必要があるため食事に時間がかかり、満腹感を味わいやすくなります。また消化に時間がかかる食材でもあるので、満腹感が持続しやすいことも特徴です。

また糖質の吸収を穏やかにする働きもあるので、食後の血糖値が急上昇せず、インシュリンの分泌を正常の範囲に止める効果も期待できます。

食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があり、両方をバランスよく摂るようにしましょう。

【食物繊維を多く含む食材】
きのこ類・ごぼう・レンコン・海藻類・いも類 など

低GI食品

食欲を抑えるには低GI食品と呼ばれる、食後の血糖値上昇が穏やかな食べ物を選びましょう。GIとはグリセミックインデックスの略で、食後血糖値の上昇度を示す値のことです。GI値が低い食品は、摂取した後に血糖値の上昇が緩やかになります。

食後血糖値が上昇しやすい食事を続けているとインシュリンに反応しにくい体になり、食欲が抑えられなくなります。

日頃から食後の血糖値が急激に上がらないようにしておくことで、インシュリンの機能が正常化し、食欲は抑えられます。

GI値はカロリーとは関係がなく、低カロリーでもGI値が高い食品もあります。食品を選ぶ際にはGI値もチェックしてみましょう。

【代表的な低GI食品】
そば・春雨・りんご・みかん・葉物野菜・きのこ類・チーズ・ヨーグルト など

食欲を抑える3つのコツ

食欲を抑えるには適切な食べ物を選ぶ以外にも方法があります。
ここでは、日常生活に無理なく取り入れられる3つのコツを紹介します。

食生活を整える

どんなに忙しい日々を送っていても、自分の食生活に関心を持ちましょう。心も身体も元気で過ごすためには食生活は大切です。

食生活は朝ごはんに始まり、昼食、夕食と3食食べることを基本とし、活動量によって間食を取り入れることで、バランスを保てます。食事の時間が不規則な人は食後の活動量を考慮して、カロリーや食べ物の種類を選ぶと良いですね。

まずは1週間単位で食生活を見直し、少し整えることから始めましょう。

  • 1週間に1回、朝ごはんにごはんと味噌汁を食べる
  • 間食したくなったら、素焼きアーモンドを食べる

無理なく自分の生活リズムに取り入れられる工夫から始めると、食の変化にストレスを感じることもありません。いつの間にか心も身体も健康になっていくでしょう。

睡眠の質を上げる

睡眠と食欲は大きく関わっています。睡眠不足によってホルモンバランスが崩れ、食欲をコントロールするシグナルが正常に伝わらなくなることが原因です。

ホルモンが正常に働きやすいのは7時間程度の睡眠と言われています。毎日7時間の睡眠時間が確保できない場合は、日々の睡眠の質を上げてホルモンの大きな崩れを回避しましょう。

睡眠の質を上げるためには寝る前の準備が大切です。

  • スマホやタブレット、テレビを見るのは就寝2時間前まで
  • 食事は就寝3時間前まで
  • 就寝1時間前にゆっくりお風呂に入って体を温める

部屋の明かりを暗くしてアロマを焚き、ヨガをしたり、リラクゼーションミュージックを聞いたりするのもおすすめです。脳がリラックスし、交感神経から副交感神経にスムーズに移行できる状況を整えましょう。

また、最低でも週に一度は長い睡眠時間を確保できるよう、スケジュールを管理する工夫も大切です。体内バランスが整い、食欲もコントロールできるようになります。

合わせて読みたい

ストレスコーピングを活用する

ストレスコーピングとは、ストレスを解消する方法のこと。自分にとって「気持ちが落ち着く」仕草であれば、どんなことでもストレスコーピングになり得ます。さまざまな方法があるので、日常生活に取り込みやすいものから挑戦すると良いでしょう。

  • 深呼吸を7回する
  • カカオ90%のチョコレートを一粒食べる
  • 丹田(臍の辺りにあるツボ)に手を当てる
  • 好きな景色の写真を眺める
  • 手首や足首を回す
  • 鏡を見て笑顔を作る

入浴や散歩、ジョギング、お気に入りのカフェに行くこともストレスコーピングになるでしょう。さまざまなストレスコーピングをリストアップし、その時に合わせて好きなコーピングを選べるようにしておくのがおすすめです。

ただし、甘いものや美味しいものをたくさん食べることは一時的な気休めに過ぎず、ストレスコーピングにはなりません。抑えにくい新たな食欲を生み出してしまうので注意しましょう。

まとめ

食欲を抑えるには、食欲コントロールの仕組みを知った上で、適切な食べ物を正しく選ぶことが大切です。

美味しいものが豊富な現代だからこそ、私たちは「空腹と関係ない食欲」に悩まされています。楽しい仲間と美味しいものを食べる時間は、簡単にコントロールできないほどの食欲を産みます。多忙な日々におけるストレスも同様に、食欲のコントロールを難しくしているのでしょう。

食欲を抑えるには我慢するのではなく、バランスよく適切なものを食べ、十分な睡眠をとることです。

記事を参考に日々の生活に取り入れられそうなものから、少しずつ始めてみましょう。