「なんだか最近お疲れ気味……」「寝ても疲れがとれない」

こうお悩みの方は、ひょっとしたら睡眠習慣が原因かもしれません。特に春は寒暖差やアレルギー、環境の変化によるストレスなどで自律神経が乱れて睡眠の質が下がりがち。それが原因でちゃんと寝ているのに疲れが取れない…となるケースがあります。

睡眠と疲労回復には密接な関係があり、睡眠不足が続くと疲労感や倦怠感だけでなく、全身の健康にも悪影響がおよんでしまいます。そこで今回は、睡眠と疲労の関係や、睡眠の質を高めるコツを解説します。

「睡眠」と「疲労回復」の関係性を知ろう

「睡眠」と「疲労回復」には、密接な関わりがあるのをご存知ですか?

仕事や家事、トレーニングの疲れを癒やすためには、質の高い睡眠が欠かせないんです!

睡眠不足=脳の休息がとれない

疲れ切った脳を休ませるためには、「休憩」だけでは不十分。身体の疲れをとるだけなら、ただ座ったり寝転がったりするだけでも十分ですが、脳の疲れをとるためには「休憩」以上に「睡眠」が重要です。

特に現代人は毎日膨大な量の情報に触れているため、知らず知らずのうちに脳が疲労している可能性があります。脳の疲労が回復されないと、翌日のパフォーマンスが低下し、仕事や家事に悪影響を与える恐れもあるため注意が必要です。脳の疲れをしっかり癒やすためにも、十分な睡眠時間を確保するよう心がけましょう!

睡眠で疲労が回復するメカニズムとは?

人間の睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類があり、約90~120分ごとに切り替わっています。

静かに眠っているように見えても、実はレム睡眠中は脳が活発に動き、夢を見ている状態です。脳は動いているものの、筋肉は弛緩し、身体は十分に休まっています。一方、ノンレム睡眠中は成長ホルモンが分泌され、脳は休まった状態です。

つまり、心身の疲れを癒やすためには、レム睡眠とノンレム睡眠がバランス良く出現することが大切なんです。

睡眠不足で、日中のパフォーマンスが1~2割低下!

睡眠不足は、日中のパフォーマンスを著しく低下させます。例えば6時間睡眠を日常的に続けていると、脳はお酒を飲んだときと同じ「酩酊状態」になり、48時間起き続けたときと同程度まで認知能力が下がります。

実際に、慢性的な睡眠不足に陥っている人は、日中のパフォーマンスが1~2割ほど低下するという研究結果も。睡眠時間が不足している人は、毎日お酒を飲んで仕事をしているようなものです。仕事や家事のパフォーマンスを高めるためにも、多忙なときこそ睡眠時間をしっかり確保したいですね。

疲労回復に必要な睡眠時間を知ろう

若い頃より睡眠時間が短くなった」と不安を感じている方はいませんか?実は、睡眠時間は年齢とともに短くなっていくものです。10代は8時間、20代は7時間、40代は6.5時間、60代は6時間がひとつの目安になります。睡眠時間が短くなったからといって、無理に眠ろうとするとかえって睡眠の質が低下してしまいます。

また、必要な睡眠時間は個人差が大きいので、上記をひとつの目安として、日中の眠気や疲労度から総合的に判断しましょう。

こんな症状ある?睡眠不足チェックリスト

  1. 日中の倦怠感
  2. イライラしやすい
  3. 集中力や注意力の低下
  4. ストレスが解消されない
  5. 血圧の上昇
  6. 頭痛・吐き気・めまい

日中の倦怠感

日中の倦怠感は、睡眠不足が原因かもしれません。睡眠のリズムが乱れると、脳の「覚醒モード」と「休息モード」を切り替える「メラトニン」の分泌量が低下します。メラトニンはスムーズな入眠へ誘う作用があり、睡眠ホルモンとも呼ばれています。このメラトニンの分泌量が低下すると、寝付きが悪くなり、睡眠の質が低下。すると、脳だけでなく身体の疲労感も回復できなくなり、日中の倦怠感へつながります。

イライラしやすくなる

睡眠時間が不足していると、交感神経が優位になり、脳や身体を活発に動かすための「アドレナリン」というホルモンが分泌されます。アドレナリンは日中活動的に動くために欠かせないホルモンですが、過剰に分泌されると、攻撃的で怒りっぽくなってしまう可能性があるんです。そのため、睡眠不足に陥ると、些細なことでイライラしやすくなってしまう人もいます。

集中力や注意力の低下

睡眠不足の状態が続くと、集中力や注意力が低下するといわれています。「最近仕事でミスが多い」と感じる場合は、睡眠時間が不足しているのかもしれません。

前述のとおり、睡眠不足の状態で仕事をするのは、お酒を飲んで仕事をするのと同じこと。日中のパフォーマンスに悪影響をおよぼす可能性が高いため、平日こそ睡眠時間をしっかり確保しましょう。

ストレスが解消されない

睡眠には、脳や身体を休めるだけでなく、「脳内の情報を整理する」という大切な役割があります。その日の出来事や学んだことだけでなく、ストレスも睡眠中に整理されるため、睡眠不足が続くとストレスがたまる原因に。また、ストレスがたまると寝付きが悪くなり、さらに睡眠不足に陥る……という悪循環にも陥りかねません。

血圧の上昇

睡眠不足に陥ると交感神経が優位になり、アドレナリンが分泌されます。アドレナリンには血圧を上昇させる作用もあるため、睡眠不足が続くと高血圧や循環器系疾患のリスクを高める恐れがあります。特に、夜間の血圧が高い場合は、一度睡眠習慣を見直してみましょう。

頭痛・吐き気・めまい

睡眠不足は、全身の健康に悪影響をおよぼします。例えば寝不足の状態が続くと脳の酸素が不足し、頭の筋肉が緊張したり、血管が収縮することで頭痛が起きることがあります。また、睡眠のリズムが崩れることで自律神経や三半規管のバランスが乱れ、吐き気やめまいといった症状が現れることも少なくありません。

日中の疲労感だけじゃない!睡眠不足によるリスク

睡眠時間が足りていないと、疲労感以外にもさまざまなリスクを引き起こす可能性があります。ここからは、睡眠不足によるリスクについて詳しく解説します。

肥満

睡眠不足の状態が続くと、食欲抑制ホルモンであるレプチンの分泌量が低下し、代わりに食欲増進ホルモンであるグレリンの分泌量が増加することがわかっています。つまり、睡眠時間が短いと、空腹感が強く、満腹感を得にくい状態が続き、結果として肥満につながってしまうのです。さらに、睡眠中に分泌される成長ホルモンは、基礎代謝とも密接な関わりがあります。肥満は睡眠時無呼吸症候群や、それによる睡眠の質の低下、生活習慣病の原因にもなるため、ダイエットや健康が気になる方は要注意です。

肌荒れ

肌は一定周期で新陳代謝を繰り返し、古くなった皮膚を排出しています。この肌の生まれ変わりを「ターンオーバー」といい、美しく健康的な肌を保つためには、ターンオーバーのリズムを整える必要があります。しかし、睡眠不足が続くと成長ホルモンの分泌量が低下し、ターンオーバーが乱れる原因に。古くなった皮膚がスムーズに排出されなくなることで、くすみやごわつき、ニキビといった肌トラブルの原因になります。

精神状態の悪化

睡眠不足は、精神状態にも悪影響をおよぼします。睡眠時間が短いと、交感神経が優位になり、不安感やイライラ感が増してしまいます。そのような日々が続くと、やがて症状が悪化し、抑うつ状態に発展するケースも少なくありません。睡眠時間を確保することは、ストレスを解消し、精神状態を安定させることにもつながります。

生活習慣病

睡眠不足は、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病のリスクを高めるという研究データもあります。睡眠時間が短いと交感神経が優位となり、夜間の血圧が上昇するのは前述のとおり。さらに、睡眠不足の状態が続くと血糖値をコントロールするインスリンの働きが抑制され、結果的に糖尿病のリスクを高めるとされています。

物忘れが増える

睡眠には記憶を整理・定着させる役割があります。睡眠不足が続くと、仕事や日常生活での記憶がうまく定着せず、物忘れのリスクが高まる恐れも……。また、寝不足が続くと、記憶を司る「海馬」が縮小するという研究結果もあります。残念ながら、いまのところ、縮小した海馬をもとに戻す方法は確立されていません。「認知症と睡眠不足には関係性がある」と考える科学者も少なくないため、将来的なリスクを考えると、若い方も十分注意が必要です。

思考能力の低下

睡眠不足が続くと思考能力が低下し、相手の話を理解する、順序立てて話すといったことが困難になってしまいます。これは、睡眠不足により脳のパフォーマンスが低下し、思考プロセスのスピードが遅くなってしまうため。また、日中に発生した有害なプロテインは、睡眠中にしか除去できないため、睡眠時間が短いと脳に余計な「ゴミ」が蓄積されてしまいます。仕事や勉強を頑張りたいときこそ、睡眠時間を削るのはおすすめできません!

体臭がきつくなる

睡眠不足が続くと皮脂の分泌が活発になります。また、悪臭の原因である乳酸、アンモニアなどの物質が汗に多く含まれるようになり、体臭がきつくなる原因に。さらに、睡眠不足が続くとストレスが増し、副腎皮質ホルモンの分泌が促されることで、加齢臭の原因となるノネールや脂肪酸といった物質が増加してしまいます。「近頃、急に体臭が気になってきた」という方は、ひょっとしたら睡眠不足が原因かもしれませんよ。

睡眠の質を高める方法8選

さまざまな健康リスクを回避するためには、睡眠時間を延ばすだけでなく、睡眠の質を高めることが重要です。睡眠の質を高める8つの方法をご紹介するので、できるものから取り入れてみてください!

①寝る前のスマートフォン・パソコン操作は控える

スマートフォンやパソコンの画面から発せられる光には、脳を覚醒させる作用があります。これは、液晶画面が放つブルーライトが、太陽に近い性質を持っているため。スマートフォンやパソコンを眺めていると、「太陽の光だ!朝だ!」と錯覚して、脳が覚醒モードに切り替わってしまいます。脳が誤って認識しないよう、寝る直前のスマートフォンやパソコン操作は極力控えましょう。できれば寝る前1時間はスマートフォンやパソコンから離れて、リラックスして過ごすのがおすすめです。

②夕食は早めの時間にとる

夕食の時間が21時以降になると、睡眠の質が低下しやすいとされています。胃の中に食べ物がある状態で眠りにつくと、睡眠中も胃が働き続けることで自然と眠りが浅くなってしまうのです。できれば夕食は、就寝前3時間以内にとるのがベスト。毎日23時に就寝する方なら、遅くとも20時までには夕食を済ませたいですね。どうしても夕食の時間が遅くなってしまう場合は、野菜たっぷりのスープやお粥など、軽めのもので済ませるのがおすすめです。

③就寝前のカフェイン、アルコールは控える

コーヒーや紅茶に含まれるカフェインには、副交感神経の働きを鈍くする作用があります。副交感神経には脳を休息モードに切り替え、スムーズな入眠へ誘う働きがあるため、就寝前のカフェイン摂取は極力控えましょう。また、同じくアルコールも、就寝前には控えるべき。お酒を飲むと、体内でアルコールを分解する過程で脳が活性化し、睡眠の質が低下してしまう恐れがあります。

④お風呂にしっかり浸かる

私たち人間の体温は活動量が増える日中に体温が上がり、活動を休める夜に向けてだんだんと下がっていきます。つまり、人間の身体は、体温が下がると自然と休息モードに入り、眠気が引き起こされる仕組みになっているのです。体温を効率的に上昇させる方法は、ズバリ入浴!就寝の2時間前にお風呂に漬かると、ちょうど良いタイミングで深部体温が下がり、スムーズに入眠できるようになります。

⑤寝る前に軽くストレッチする

深部体温を上げるなら、軽いストレッチもおすすめ。血行が促進されることで深部体温が上がり、スムーズな入眠へとつながります。また、適度に身体を動かすことで、筋肉の緊張がほぐれるのもポイント。身体がリラックスすることで、心地良い眠りに誘ってくれます。ただし、あまり激しく身体を動かすと、かえって脳が覚醒してしまう恐れがあるため注意が必要です。

⑥朝、起き抜けに朝日を浴びる

眠気を誘うホルモンのメラトニンは、朝日を浴びてから14~16時間ほどで分泌されるとされています。朝、起きてすぐに太陽の光を浴びると、ちょうど夜眠る頃にメラトニンが分泌されるので、スムーズな入眠につながります。太陽の光には、「幸せホルモン」と呼ばれているセロトニンの分泌や、免疫力を高めるビタミンDの生成など、うれしい効果が満載。時間に余裕のある朝は、太陽の下で散歩やウォーキングを楽しむのもおすすめです。

⑦起床時間と就寝時間を固定化する

睡眠の質を向上させるには、体内時計のリズムを整えることも大切。起床時間や就寝時間がまちまちだと、体内時計のリズムが崩れて、覚醒モードと休息モードの切り替えがうまくできなくなってしまいます。また、「休日だから」「最近寝不足だから」といって必要以上に長く眠ると、かえって睡眠の質が低下してしまいます。身体に睡眠のリズムを覚えさせるためにも、毎日規則正しい生活を心がけましょう。

⑧アロマの香りを使う

アロマの香りには、「イライラを抑える」「集中力を高める」などさまざまな働きがあります。「最近寝付きが悪い……」とお悩みの方は、ぜひアロマの香りを生活に取り入れてみてください。リラックス効果のあるアロマの香りで、スムーズな入眠をサポートしましょう。

以下のような香りがおすすめです。

  • ラベンダー
  • ネロリ
  • サンダルウッド
  • オレンジ
  • ベルガモット

2分で寝れる!?米軍が実践する睡眠導入法とは

ベッドに入ってからなかなか眠りにつけずに困っている…

そんなときは「米軍式睡眠法」を試してみてください!

2分で睡眠したという声も上がっています。

早速やり方を紹介します。

  1. 布団・ベッドに入ったら楽な姿勢になります
  2. 目や鼻など部分ごとに意識を集中させ、力を抜きます
  3. 顔全体の力が抜けたら今度は肩と腕も力を抜いていきます
  4. ゆっくり呼吸をして胸の力を抜きます
  5. 脚の力も抜きます。ベッドに沈んでいくようなイメージです
  6. 何も考えずに10秒かけて深呼吸をします
  7. 以下のいずれかをイメージします
  • 穏やかな湖に浮かぶ小舟の上であおむけになっていて、目の前は澄んだ青空が広がっている。
  • 真っ暗な部屋の中で黒いベルベットのハンモックに横たわっている。
  • 10秒間「何も考えない、何も考えない、何も考えない……」と繰り返す。

効果が出ない人でも続けることで改善するケースも見られます。

是非ためしてみてください!

どうしても睡眠が不足してしまうときの対処法

仕事や家事・育児などで忙しくしていると、どうしても睡眠が不足しがちに。では、睡眠不足が続いてしまったときは、どのように対処すれば良いのでしょうか?

適度な仮眠をとる

「毎日忙しくて睡眠時間が確保できない!」という方は、昼休みなどに仮眠をとりましょう。適切な仮眠は集中力や注意力を高め、仕事や勉強の生産性が向上するとされています。1回の仮眠時間は、だいたい15~30分がベスト。あまり時間が長すぎると眠りが深くなり、かえってぼーっとしてしまうので注意が必要です。

睡眠の専門医に相談する

今回ご紹介したようなコツを実践しても「眠りが浅い」「寝ても疲労感がとれない」という方は、睡眠の専門医に相談するのもおすすめです。なんらかの原因で睡眠障害を発症している恐れもあるため、睡眠不足が続く場合は医療機関を受診しましょう。睡眠に関する悩みは、精神科や心療内科、神経内科などに相談するのが一般的です。

睡眠Q&A

Q.目覚ましのスヌーズ機能がないと起きられないのですが、どうすればいいでしょうか?

A.スヌーズ機能が鳴ってからじゃないと起きることができない習慣が身についてしまっている可能性があります。人間は一定の期間同じ行動を繰り返すと意識しなくてもその行動をとるようにできています。スヌーズ機能が複数回鳴るまで起きずにいる習慣を続けていると、たとえ1回目で起きていてもスヌーズ機能が鳴るまで脳が覚醒しないようになるためスヌーズ機能を使って起きる習慣を改めると良いでしょう。

Q.睡眠の周期は90分毎に来るのでしょうか?

A.90~120分と個人によって幅があるため必ずしも当てはまるとは言い切れません。あなたの睡眠周期がどれくらいなのか、検証してみてください!

Q.平日に睡眠時間を確保できないので、休日の寝だめで解決できますか?

A.寝だめで日頃の睡眠不足の解消は難しいでしょう。むしろ睡眠時間を極端に増やすことで平日の睡眠の質まで低下してしまいます。

Q.羊を数えれば眠れますか?

A.そもそも羊を数えるというのは英語のSheepとSleepの発音が似ているかつシープという響きで眠くなるという説から来ています。そのため日本語で言っても効果は見込めないでしょう。米軍式睡眠法の方がおすすめです。

まとめ

「睡眠」と「疲労回復」には、密接な関わりがあります。特に、仕事や勉強による脳の疲労は、睡眠中にしか回復できません。睡眠不足の状態が続くと、集中力・注意力の低下やストレスの増加など、さまざまな悪影響がおよんでしまいます。ぜひ今回ご紹介したコツを参考に、睡眠の質を向上させて、快適な眠りを手に入れてください!

疲労に関するおすすめ記事はこちら