便秘は誰にとっても身近な問題です。特に長引くと辛いですよね。お腹の張りによる不快感が続くほか、トイレのときには人より時間がかかったり、痛みを伴ったりすることもあります。吹き出物などの肌トラブルが現れる人も少なくありません。
また大腸がんや腸閉塞、過敏性腸症候群といった病気と関連して便秘症状が現れることもあるため、楽観的に放置しすぎるのも考えものです。
この記事では便秘を引き起こす3つの要素について説明し、解消に役立つ食事や運動などを紹介します。
また即効性の高い市販の便秘薬や、整腸剤を選ぶ際のポイントについても解説します。
この記事でわかること
・「食生活の偏りや乱れ、水分不足」「トイレを我慢するクセや生活上のストレス」「運動不足」が便秘の原因につながる
・野菜・穀類・豆・海藻・果物・発酵食品・大豆やタマネギなどのオリゴ糖を含む食べ物が改善に役立つ
便秘の原因につながる3つの要素
まずは便秘を引き起こす要因を3つ確認しておきましょう。
①食生活の偏りや乱れ、水分不足
1つ目は「食生活の偏りや乱れ、水分不足」です。
普段の食事でどんなものをどれだけ食べているか、振り返ってみてください。手軽に一皿で満腹になる麺類や丼もの、片手間につまめるパンや菓子類などについつい手が伸びてはいませんか?
便の排出をスムーズにしてくれるのは、食物繊維や脂質、乳酸菌、オリゴ糖などです。特に食物繊維は現代人に不足しがちな栄養素といわれています。
さらに不規則な食事時間や無理なメニュー制限を伴うダイエットも、便秘につながることがあります。
「休憩時間にはつい水分補給を忘れている」あるいは「気がつくと口にしていた飲み物がカフェインやアルコール飲料ばかりだった」という人も、便秘には注意しましょう。
②トイレを我慢するクセや生活上のストレス
2つ目は、「トイレを我慢するクセや生活上のストレス」です。
トイレに行くのを過剰に我慢すると、それがストレスとなって便が出にくくなってしまうこともあります。我慢が習慣化すると、腸の運動が抑制されたり、便意を感じられなくなったりするのです。
またトイレに関すること以外でも、精神的なストレスが排便を困難にすることが少なくありません。排泄には自律神経の働きも大きく関わっています。仕事やプライベートで緊張が続いたり、不安や疲労がたまったりしていると、自律神経に悪影響が現れるのです。
③運動不足
3つ目は「運動不足」です。
定期的な運動習慣がない人は、便秘になりやすい傾向があります。身体を動かさないので血流が悪くなり、腸も物理的な刺激を受ける機会が減ってしまうのです。
「朝から晩までデスクワークで座りっぱなし」、「少しの外出にもつい車を使ってしまうので、歩くことが少ない」というような人は、特に気をつけましょう。
便秘解消におすすめの、5種類の食べ物
ここからは便秘解消におすすめの食べ物や飲み物をピックアップします。日々の食事メニューの参考にしてください。
①野菜や穀類・豆など、不溶性食物繊維が豊富な食材
「不溶性食物繊維」は水に溶けないタイプの食物繊維です。繊維質が水を吸収して便のかさを増し、腸の運動を刺激して排便をうながします。
不溶性食物繊維が豊富な食材の一例は、以下の通りです。
- 野菜・・・・ブロッコリー、オクラ
- 穀類・・・・サツマイモ、玄米、そば
- 豆類・・・・大豆、おから
- キノコ類・・・エノキ、なめこ
②海藻・果物など、水溶性食物繊維が豊富な食材
「水溶性食物繊維」は水に溶けるタイプの食物繊維です。水と結合し、ゼリー状の物質を作って便を柔らかくする働きがあります。
水溶性食物繊維が豊富な食材の一例は、以下の通りです。
- 海藻・・・ワカメ、ひじき
- 穀類・・・大麦、オートミール
- 果物・・・リンゴ、バナナ
また不溶性と水溶性、両方の食物繊維を含む食材もあります。
一般的に現代人に不足しがちなのは水溶性食物繊維ですが、身体に対する働きが異なるので、どちらか一方だけではなく、両方をバランスよく摂取することを心がけましょう。
③ヨーグルトなど腸内環境を整える発酵食品
また発酵食品は、腸内環境を整えるいわゆる「腸活」に一役買うものとして、近年特に注目が高まっています。
・ヨーグルト、キムチ、納豆、味噌、甘酒、チーズなど
④オリゴ糖を含む食材、食品
オリゴ糖も腸内の善玉菌のエサとなることで、腸内環境を良くしてくれます。
オリゴ糖を含む食材には以下のようなものがあります。
・大豆、タマネギ、ネギ、ごぼう、バナナ、アボカド、ブロッコリー、アスパラガス
これらの食材を積極的に食事に取り入れるのが理想ですが、手早く摂取したい場合は、砂糖の一部を市販のオリゴ糖シロップに置き換えるのもおすすめです。
⑤特定保健用食品(トクホ)」や「機能性表示食品」
また「特定保健用食品(トクホ)」や「機能性表示食品」などを活用するのも良いでしょう。
トクホは国の専門機関が審査し、消費者庁が認可した食品のこと。機能性表示食品はメーカーが科学的根拠に基づいた健康効果を消費者庁に届け出たうえで、パッケージに機能を表示している食品のことです。
スーパーやドラッグストアーで「おなかの調子を整える」などの文言が表示された食品を探してみてください。
便秘解消におすすめの飲み物4選
続いては、便秘解消の効果が高まる飲み物を紹介します。
水、白湯
水分補給不足も便秘の一因でした。身体が水分不足に陥らないように、まずは水や白湯を飲む習慣を定着させると良いでしょう。
朝起きたらまずコップ1杯の水を飲み干すようにしてください。すると腸も活発に動き始めます。
暑い時期には氷入りなどの水が飲みたくなりますが、腹を冷やしすぎないために常温の水や白湯にするのがベターです。
お茶
お茶も身体への負担が少なめで、生活に取り入れやすいでしょう。
なかでも、玄米茶、ルイボス茶、ハトムギ茶、ハーブティーなどには、食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富に含まれていて、便通に良い影響が期待できます。
紅茶や緑茶にはカフェインが含まれており、利尿作用があるため、逆に水分不足を招く可能性もあります。
また便通改善効果を謳い「すぐに出る」「お腹がぺったんこに」などと打ち出しているお茶の中には、下剤と共通する成分が含まれていたり、飲み続けると耐性が付いてしまったりするものもあります。
購入前にはドラッグストアで専門家に相談するなど、慎重に検討してください。
牛乳
牛乳の中には「乳糖」という糖類が含まれており、これが腸内で善玉菌を増やし、腸の動きを活発にします。
ちなみに正確な数字は確定していませんが、日本人には高い割合で「乳糖を十分に消化・吸収できない人がいる」といわれています。牛乳を飲むとお腹がゴロゴロしたり、下痢をしてしまう人は「乳糖不耐」の可能性があります。
日本では欧米と比べて酪農が広まるのが遅く、乳製品を摂る習慣が乏しかったことが関係しているといわれています。
ココア、飲むヨーグルト、乳酸菌ドリンク
ココアは原料のカカオマスに由来する、不溶性食物繊維が豊富なドリンクです。
飲むヨーグルトにも乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が多く含まれています。
ココアや少量を毎日習慣的に飲むようにすると良いでしょう。ただしココアや飲むヨーグルトには糖分を加えることも多いため、糖分の摂りすぎに陥らないよう気をつけてください。
便秘解消におすすめの運動、ツボ
運動不足から来る便秘には、軽いエクササイズやツボも試してみてはいかがでしょうか。
ウォーキング
まず運動習慣として最も手軽に始められるのが、ウォーキングです。
身体を動かすだけでも、まずは全身の血の巡りが良くなります。リズミカルに足を踏み出す動作で腹筋を刺激し、鈍かった腸の動きを活性化させてください。
1日あたり30分、なくても10分ほどから歩く習慣を始めてみましょう。
ヨガ
ヨガやストレッチも、腹筋を収縮させて腸の働きを改善する運動の1つです。また排便時に使う筋肉も鍛えることもできます。ここでは代表的な2つのポーズを紹介します。
ガス抜きのポーズ
特に「ガス抜きのポーズ」は、腹の不調に効果的とされています。
- まずは仰向けになり、両膝を抱える姿勢で深く息を吸ってください。
- そしてゆっくり息を吐きながら尻を上げ、太ももを胸のほうまでぐっと引き寄せ、腹部を圧迫します。
この呼吸と動作を繰り返すと、腹の中にたまったガスが抜けやすくなります。
うつ伏せのポーズ
寝ている状態でも簡単に始められるのが、「うつ伏せのポーズ」です。
- うつ伏せに寝そべり、両足を肩幅程度に開きます。
- 両手は身体の側面に付け、手のひらを天井方向に向けてください。
- お腹を床に付けた状態で上半身と両足とを床からゆっくり浮かせ、30秒から1分間程度、深呼吸しながら姿勢をキープしましょう。
このポーズも重力を利用して腹部に圧をかけることで、ガスを出しやすくします。
これ以外にも、腹部や周辺の筋肉を伸ばすストレッチも有効です。
ウォーキングやヨガなどの軽い運動習慣は、気分転換やストレス解消にもつながり、精神面からも便秘改善に効果的です。
あわせて読みたい
マッサージ、体操
マッサージや体操も気軽に始められる便秘対策の1つ。腸の位置をしっかり意識して、無理なく身体を動かすのがポイントです。
のの字マッサージ
正面から見てへそを中心として「の」の字を描くように、腹の表面を押して圧をかけながら、ゆっくりと手を移動しましょう。腹の中央にある小腸と、その下からぐるりと小腸を取り囲むような形になっている大腸の流れと同じ方向に刺激します。
腸内に滞っているものを肛門へ向けて押し出すようなイメージでマッサージしてください。なお大腸の流れと逆方向にマッサージすると効果がありません。
腰ひねり体操
立って足を肩幅程度に開くか、椅子に浅く腰かけたまま、腰を左右にひねる「腰ひねり体操」もおすすめです。ゆっくりと息を吐き、腹筋やその中の腸がねじれるのを意識しながらやってみてましょう。
マッサージや体操は、隙間時間などを活用して毎日取り組むのが有効です。
あわせて読みたい
ツボ
ツボは「経穴(けいけつ)」とも呼ばれ、中国伝統医学(中医学)がルーツ。指や灸 (きゅう) 、鍼 (はり)などを用いて 皮膚の表面から刺激することで、血管や神経系、筋などでつながる内臓の機能を高めます。
便秘に効くとされるツボはいくつかありますが、ここでは自分ひとりでもやりやすい、手と腹のツボを取り上げましょう。
手のツボ:合谷(ごうこく)
「合谷」は人差し指と親指の骨の付け根付近にあるツボです。反対側の手の親指でぐっと押さえてみてください。
腹のツボ:天枢(てんすう)
「天枢」はへそを中心として、左右方向に指3本分外側にあるツボです。両側を同時に、人差し指・中指・薬指でギュッと押さえてみてみましょう。軽く腹が凹む程度が目安です。
手と腹部には、これ以外にも便秘を楽にするツボがあるほか、足や背中にも存在します。
即効性のある便秘薬は正しく服用しましょう
即効性のある対策として、便秘薬やサプリメントを使う方法があります。
なお「便秘薬」は腸に直接作用して便を排出しやすくするので、即効性があります。これに対し「整腸剤」は、腸内環境を整えて緩やかに効果を発揮します。
市販の便秘薬には「刺激性」と「非刺激性」がある
市販の便秘薬には「刺激性」と「非刺激性」の2種類があります。
刺激性は腸の運動に直接働きかけ、比較的速い効果が見込めるタイプです。ただし長期間にわたって使い続けると、腸の働きが薬剤に依存してしまうおそれがあります。
非刺激性の便秘薬は、腸内に水分を増加させて便を柔らかくする作用があります。刺激性便秘薬よりも効果が現れるのは穏やか。よく配合される有効成分の1つに「酸化マグネシウム」などがあります。
刺激性か非刺激性かは、パッケージに記載されている成分名によって見分けることができます。
急いで便秘症状を解消したい場合には刺激性が適していますが、便秘が長期化している場合や他の健康問題の影響も疑われる場合には、使用前に必ず医師に相談するようにしましょう。
食物繊維を含むサプリメント
食物繊維を含むサプリメントには、錠剤、粉末、ドリンクなどさまざまなタイプがあります。
仕事の合間にサッと飲みたいなら錠剤が、普段の料理や飲料に混ぜて無理なく摂取したいなら粉末タイプが適しています。飲める時間帯やライフスタイルに合わせて選んでください。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方をバランスよく配合したものを選ぶと良いでしょう。
乳酸菌、ビフィズス菌を含むサプリメント
乳酸菌やビフィズス菌のサプリメントや、菌を含む食品を活用するのも一案です。どちらも腸内に存在する善玉菌の代表格であり、消化器系の健康をサポートする重要な役割を果たします。
乳酸菌
乳酸菌は腸の中で乳酸を作り出し、悪玉菌の繁殖を抑えて細菌バランスを向上させます。
近年では多様な健康効果に注目が集まっており、ヨーグルトや飲料のみならず、菓子やおかずなど、さまざまな食品にも取り入れられ、販売されています。
ビフィズス菌
ビフィズス菌は主に人間や動物の大腸の中に生息して、腸内環境を整える働きがあります。
乳酸菌との違いは、腸内に乳酸だけでなく、酢酸も多く作り出す点。腸内を酸性に保ち、病原菌や食中毒の元となる有害細菌に対しても効力を発揮します。
乳酸菌、ビフィズス菌とも、取り入れやすい食品はたくさんありますが「一度摂取すればずっと腸内に住み続ける」というものではありません。継続的に毎日摂取するのが重要です。
薬剤、サプリメントとも、正しい用法・容量を守りましょう。できるだけ、規則正しい生活や適度な運動といった要素も取り入れてください。なかなか改善しない場合は早めに医師にかかるのが望ましいでしょう。
必要な成分を診断して、あなたにあったサプリメントを選びましょう
まとめ
仕事などで忙しい現代人は、便秘になりやすいライフスタイルといえます。手軽に済ませられるメニューをかき込むように食事を済ませ、気づけば夜まで座りっぱなし。帰宅後に運動するのも億劫で、休日は家で画面を見ながらゴロゴロ…。こういった生活が便秘を招き、さらには悪化させてしまいます。
健康的な排便習慣のためには、バランスの良い食事に適度な運動を組み合わせ、規則正しい生活を送るのが基本です。普段の食事メニューに食物繊維や発酵食品を積極的に取り入れるのが理想ですが、トクホや健康機能表示食品、サプリメントを活用するのも良いでしょう。
即効性を求めるのであれば、市販の刺激性便秘薬を服用して様子を見てみてはいかがでしょうか。ただし使うことに慣れてしまうと、腸の働きが薬剤頼みになってしまい、自然な排便習慣は戻りません。
頑固な便秘症状の背後には病気が潜んでいることもあります。気がかりなことがあれば、必ず医師や薬剤師に相談してくださいね。