中性脂肪が高めの方はナッツを食べるとよいといわれていますが、一方で中性脂肪を増やす恐れがあるともいわれています。本当はどちらなのか、気になっている方もいるでしょう。
ナッツは確かに中性脂肪高めの方にとって良い成分が多く含まれるため、適切に食べることはおすすめです。ですが、デメリットもあることを知り、適切な食べ方を守ることが大切です。
この記事ではナッツがおすすめな理由やデメリットをまとめ、おすすめの食べ方もご紹介します。ナッツの種類ごとに期待できる効果もまとめましたので参考にしてください。
中性脂肪高めの方にナッツがおすすめな理由
ナッツに含まれる栄養素の中には、中性脂肪値を改善させる効果を期待できるものがあります。
そのため、中性脂肪値が高めといわれる方におすすめなのです。ここでは具体的にどのような栄養素が含まれているのかご紹介します。
良質な脂質が多い
脂質は中性脂肪値を高めるのでは、と思うかもしれません。ですが、ナッツ類には不飽和脂肪酸という脂肪が多く含まれています。
不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸という2つの種類に分類できます。どちらも悪玉コレステロール値を下げる働きがありますが、多価不飽和脂肪酸はさらに血圧を下げる効果も期待できるのです。
代表的な一価不飽和脂肪酸は「オレイン酸」です。ナッツの他にもひまわり油やオリーブオイルなどにも含まれています。多価脂肪酸の代表といえば「αリノレン酸」です。ゴマ油やアマニ油などにも含まれています。
ナッツの種類によって含まれる不飽和脂肪酸の種類は違いますが、どちらも悪玉コレステロール値を下げる働きが期待できます。悪玉コレステロール値を下げることで、中性脂肪値を改善できる可能性は高いのです。
食物繊維が豊富
腸を整える効果が期待できる食物繊維も、ナッツ類には豊富に含まれている栄養素です。食物繊維は人間が持っている消化酵素では消化されないため、胃や小腸でも消化吸収されずに大腸まで到達し、採取的に便として排出されます。
食物繊維は身体の中を移動しながら余分な脂質や糖質などを取り込み一緒に排出してくれます。このため、身体の吸収される脂質や糖質の量を減らしてくれる効果が期待できるのです。
食物繊維は現代の日本人が不足しがちな栄養素の1つと言われています。ナッツを食べることで不足気味の食物繊維が補えるのは嬉しいポイントでしょう。
糖質が少ない
糖質は生物が生きるためのエネルギー源として必要不可欠な成分です。そのため、不足してしまった場合に備え、活動に不要な糖質を蓄える機能を備えています。糖質はそのままの状態で蓄えられているのではなく、筋肉や肝臓にグリコーゲンとして蓄えられます。
筋肉や肝臓に蓄えきれなくなると、糖質は血液中に中性脂肪として蓄えられ、身体の脂肪細胞に取り込まれていきます。つまり、糖質の摂り過ぎは中性脂肪値を高める原因となるのです。
ナッツは中性脂肪の原料となる糖質の含有量が少ないという特徴があります。また、ナッツ類は硬く、食べるためによくかまなければならないため、少量でも「食べた」という満足感が得られるため、余分な糖質を摂取せずに済みます。
ナッツの食べ過ぎによるデメリット
中性脂肪値の改善が目指せるといわれると、ナッツをついたくさん食べたくなります。ですが、ナッツを食べることにはデメリットもあります。デメリットを把握することで、食べ過ぎを防ごうとする意識が働くでしょう。
カロリーは高め
ナッツ類は多脂性食品といい、脂質が多い食品です。含まれる脂質は良質なものですが、カロリーベースで見た場合にはやはり高カロリーな食品です。
例えば煎っただけのアーモンドの場合、100g当たりのカロリーは608kcalです。お茶碗に軽く一杯持った約150gのご飯でも240kcal程度なので、かなりの高カロリーであることが分かります。
ナッツの過剰摂取はカロリー過多となるため、1日25g程度までに留めることが必要です。アーモンド25gのカロリーは約152kclとなります。
脂質異常に繋がる心配も
中性脂肪やコレステロールというと悪いものと思われがちですが、本来は身体の機能を維持するために必要なものです。ですが、中性脂肪値が過剰になったり、コレステロールのバランスが崩れたりすることは大きな問題です。このような状態を脂質異常といい、脂質異常症は生活習慣病の1つとして治療を要する状態となります。
いくら良質な脂質が多いナッツ類でも、摂取し過ぎることで血中の中性脂肪値を高める心配があり、脂質異常を引き起こす原因になります。
身体によいものでも摂り過ぎは逆効果になることを意識しましょう。
おすすめの食べ方
ナッツをそのまま食べるのもよいですが、せっかくであれば食事に取り入れたいところです。ここではナッツを美味しく食事に取り入れられるおすすめの食べ方を2つご紹介します。
ナッツ+サラダ
健康のためには生野菜をたくさん食べるとよいといわれています。ですが生野菜は味わいも食感も単調で、たくさんは食べられないと思う方もいるでしょう。そこで、香ばしく食感も楽しめるナッツ類をドレッシングに混ぜたり、サラダに直接乗せたりして食べるのはいかがでしょうか。
ナッツ入りのドレッシングは市販品にもたくさんあります。手軽に試してみたい場合には、まずは市販品を使ってみるとよいでしょう。ポテトサラダやカボチャサラダの場合には、スライスしたアーモンドをトッピングすると食べやすくなります。
和え物のアクセントに
和食の副菜の「和え物」にも、ナッツ類を入れることで食感が変わり食べやすくなります。例えば、豆腐をベースに作る「白和え」に細かく砕いたナッツを入れることで風味も食感もプラスされます。
和食の場合はクルミを使う場合が多いようです。クルミは日本各地の伝統料理にも使われるなど、馴染みのある食品ということも原因でしょう。日本では縄文時代からクルミを食べていたとも言われています。また日本固有種もあるなど、日本人にとってなじみ深いナッツです。
クルミをすり鉢で細かく砕きそばつゆをプラスしてつけ汁にして、そばやうどんを食べるのもおすすめです。
ナッツの種類と期待できる効果
ナッツには色々な種類があります。ナッツごとに含まれる栄養素が違うため期待できる効果も少しずつ違いがあります。ここでは代表的なナッツの種類と、含まれる栄養素、期待できる効果についてまとめました。
アーモンド
アーモンドに含まれる代表的な栄養素
- オレイン酸:1価不飽和脂肪酸で悪玉コレステロールを減らす
- 食物繊維:腸を整え余分な脂質や糖質の吸収を抑える
- ビタミンE:抗酸化作用がありアンチエイジング効果も
- ビタミンB2:粘膜の健康維持に役立つ
輸入されるナッツ類の中でも最も輸入量が多く、なじみ深いナッツといえばアーモンドでしょう。ナッツ類の中でもとくに食物繊維が多く、25g中3.0gが食物繊維です。
アンチエイジング効果や粘膜の健康維持など、女性に嬉しい効果も高いナッツです。
マカダミアナッツ
マカダミアナッツに含まれる代表的な栄養素
- オレイン酸:一価不飽和脂肪酸で悪玉コレステロールを減らす
- 食物繊維:腸を整え余分な脂質や糖質の吸収を抑える
- パルミトレイン酸:一価不飽和脂肪酸の1種で肌の保湿や保護に役立つ脂質
- 鉄分:酸素を全身に運ぶ働きをもつヘモグロビンを構成するミネラル
- マグネシウム:酵素を活性化させ体温や血圧の調整にも役立つ
ナッツの中でも脂質が多いマカダミアナッツですが、その約8割がオレイン酸です。美容効果が期待できる栄養素も多く、女性に人気が高いナッツの1つです。
ヘーゼルナッツ
ヘーゼルナッツに含まれる代表的な栄養素
- オレイン酸:一価不飽和脂肪酸で悪玉コレステロールを減らす
- ビタミンB群:特にパントテン酸(皮膚や粘膜の健康維持)や葉酸(貧血を防ぐ)が豊富
- カリウム:余分な水分を排出し血圧を下げる
- 鉄分:酸素を全身に運ぶ働きをもつヘモグロビンを構成するミネラル
- 銅:エネルギーの生成をたすける
ヘーゼルナッツはあまりなじみがないかもしれませんが、チョコレート菓子などに使われる「プラリネ」の原材料の1つです。独特の風味や食感があり、世界三大ナッツの1つに挙げられています。エネルギー生成をたすける銅を含むため、中性脂肪を減らす働きが期待できそうです。
カシューナッツ
カシューナッツに含まれる代表的な栄養素
- オレイン酸:一価不飽和脂肪酸で悪玉コレステロールを減らす
- ビタミンB群:エネルギー生成をたすける
- 亜鉛:免疫機能を高め正常な味覚を形成する
- ビタミンK:骨の形成に必要不可欠なビタミン
亜鉛の含有量がナッツ類の中で特に多いのがカシューナッツです。普段の食事では不足しがちなミネラルの1つともいわれています。亜鉛は髪や皮膚の健康維持や生殖機能の維持にも必要不可欠なミネラルなので、特に男性は意識して摂取したいミネラルです。
ココナッツ
ココナッツに含まれる代表的な栄養素
- ラウリン酸:飽和脂肪酸の1種ではあるが脂肪になりにくい脂肪酸
- カリウム:余分な水分を排出し血圧を下げる
- マグネシウム:酵素を活性化させ体温や血圧の調整にも役立つ
ココナッツの約65%は脂質で、そのうち半数はラウリン酸という飽和脂肪酸です。ナッツ類としては珍しい飽和脂肪酸を多く含む木の実ですが、ラウリン酸は脂肪になりにくく、脂肪の蓄積を防止する効果も期待できます。飽和脂肪酸でありながらも、中性脂肪を皮下脂肪として蓄えるのを抑制してくれます。
くるみ
くるみに含まれる代表的な栄養素
- αリノレン酸:多価不飽和脂肪酸で悪玉コレステロールを減らし血圧も下げる
- 食物繊維:腸を整え余分な脂質や糖質の吸収を抑える
- ポリフェノール:強い抗酸化作用を持ちアンチエイジング効果が期待できる
- メラトニン:良質な睡眠に欠かせないホルモン
他のナッツ類と比べ、多価不飽和脂肪酸が豊富である点はくるみの特徴的な部分です。またポリフェノールが多く、その量は赤ワインをはるかに上回るとされています。中性脂肪や悪玉コレステロール値が気になるほかに、血圧も高めの方におすすめしたいナッツです。
ピスタチオ
ピスタチオに含まれる代表的な栄養素
- リノール酸:多価不飽和脂肪酸で悪玉コレステロールを減らし血圧も下げる
- オレイン酸:一価不飽和脂肪酸で悪玉コレステロールを減らす
- ビタミンB6:エネルギー生成をたすけ、精神の安定にも役立つ
- カロテノイド:特にルテインとゼアキサンチンが多く目の健康維持に役立つ
近年人気が高いナッツでもあるピスタチオの半分は脂質です。多価不飽和脂肪酸である「リノール酸」と一価不飽和脂肪酸「オレイン酸」を含んでいます。特筆すべきは他のナッツ類に比べカロテノイドが多い点です。目の健康を意識している方には特におすすめしたいナッツです。
ピーナッツ
ピーナッツに含まれる代表的な栄養素
- リノール酸:多価不飽和脂肪酸で悪玉コレステロールを減らし血圧も下げる
- オレイン酸:一価不飽和脂肪酸で悪玉コレステロールを減らす
- カリウム:余分な水分を排出し血圧を下げる
- 食物繊維:腸を整え余分な脂質や糖質の吸収を抑える
- ナイアシン:血行を改善し脳の働きも助ける
ピーナッツは今まで紹介したナッツ類とは異なり本来は豆類に属します。そのため、植物性たんぱく質が他のナッツ類に比べ豊富に含まれています。糖質も少ないため、太り気味な方でも安心して食べられます。
注意が必要な「ナッツ」も!
ナッツは総じて高めの中性脂肪や悪玉コレステロールを減らす効果が期待できますが、注意したい点があります。ナッツ類には塩分や油分が添加されているものも多い点です。
お酒のおつまみとして売られているミックスナッツには油で揚げたものも多くあります。食品添加物がプラスされている場合もあるため、できれば無塩無油タイプのナッツを選びましょう。
またナッツ類はアレルギーを引き起こす心配があります。中性脂肪値改善のためにはじめて食べる場合には、アレルギー症状の有無を確認することも大切です。
まとめ
ナッツ類は脂質が多い食品ですが、不飽和脂肪酸というタイプの脂質が多い為、中性脂肪値を上げてしまう心配はすくないでしょう。悪玉コレステロールを減らす効果が期待できるため、適度な量を食べる分には健康効果が期待できる食品です。
ただ食べ過ぎや塩分、油分などに注意することも大切です。食べるときには適量と言われている25g程度に小分けされたものを選び、無塩無油のミックスナッツがおすすめです。
ナッツだけを食べるのもよいですが、普段の食事に上手に利用し相乗効果を狙うのもよいでしょう。