この記事でわかること
・早食いが「消化管のトラブル」「体重の増加」「心の健康リスク」「虫歯」「食道のトラブル」を誘発する
・「視繊維が多い食材」「食感がしっかりしている素材」が早食い防止に役立つ
・一口30回噛むように意識しよう!

はじめに

「早食いは体に悪い」
一度は耳にしたことがあるかもしれません。

小学生の「給食」の時間に何度も言われた経験がある方もおられるのではないでしょうか。

早食いが体に良くない影響を及ぼすかも知れない、という事実は最近言われ始めたわけではありません。子供時代に親や学校で伝えられてきたことであり、多くの方の認識として「早食いは体に悪い」という意識があるでしょう。

しかし、現代の日本社会においては早食いが避けられない場面も多く存在しています。

テレビで見るような救急医療の現場にいる人や、外回りの合間に短時間で済ませなければならない人、ワンオペ子育て中で自分の食事には手間も時間もかけられない日常を送る人など、理由は違えど多くの方が早食いをせざるを得ない生活を送っているのも事実です。

飲食店でも「早さ」を求める顧客に対応できる食事を売りにしていたり、簡単に手早く済ませられる商品があったりと、食事時間を短縮したいというニーズは無くなることはありません。

しかし、早食いには「時間を有効に使いたい」といったポジティブな理由や習慣として受け止めることもできる一方で、深刻な問題を引き起こす可能性も潜んでいます。

早食いは満腹感を感じにくいために食べ過ぎのリスクが高まることや、消化不良を引き起こすこともありますし、長期的な習慣になれば肥満や生活習慣病のリスクを高めることも指摘されています。

ここでは、早食いの実態や早食いがもたらす健康リスクについて詳しくご紹介します。

食事は私たちの生活の大切な一部です。

毎日訪れる食事の時間を楽しみながら健康的な生活を送れるよう「今日から出来ること」をお伝えしますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。

早食いが引き起こす健康リスク

早食いは健康リスクを引き起こす可能性があります。
消化吸収だけでなく、体重増加がもたらす疾患までさまざまな影響について解説します。

胃が大きくなる

早食いを続けていると、食事量が増える傾向があります。

一般的には食べる際に咀嚼することで満腹感を感じますが、早食いの場合は満腹感を感じる前に多くの食事を摂ることができてしまいます。常に早食いをすることで結果として胃が拡張し、通常の量では満腹感を得にくくなるのです。

早食いをきっかけに胃の容量が増し、結果的に過食の原因となる可能性が高まります。

げっぷや胃酸が逆流する

早く食べると食べ物と一緒に空気が胃に入ることが多くなります。

本来であれば咀嚼により細かく砕かれた食物を少しづつ嚥下しますが、早食いの場合は食物の形態が大きいまま早く嚥下をすることで周囲の空気も飲み込んでしまいます。胃内に入った空気で胃が膨れるとげっぷとして空気が排出されます。その際に胃液も逆流する場合があり、強い酸性の胃液が食道の粘膜に触れることで食道炎の原因となるのです。

この逆流性食道炎は、胸焼けなどの不快な症状の原因にもなりますし、傷んだ食道粘膜によってその他の疾患が引き起こされる原因にもなり得ますので、経過観察として胃の内視鏡検査を行ったり、内服による治療が必要になることもあります。

おなかの中の食べ物がうまく混ざらない

早食いは「噛む」回数が少ないまま食物を飲み込むことになります。

食物の種類にもよりますが、十分な咀嚼が行われない場合は「咀嚼不足」となり、大きな食材がそのまま胃に運ばれることも多くあります。大きな形態のままで食物が胃内に入ると、消化酵素と食べ物が十分に混ざり合わず、本来行われるレベルまでの消化ができなくなります。その結果、消化不良を起こすリスクが高まるのです。

体重の増加

食事を進めるとやがて「おなかがいっぱい」と感じますが、これは胃内に入った食物によって満腹中枢が刺激されることで脳が認識するために自覚できます。

ただし、胃内で行われる食物の処理速度と「おなかがいっぱい」と感じるタイミングにはズレが生じることがわかっています。

早食いの場合は、胃から脳に伝わる「満腹」のサインが届く前に次々に食物を摂る状態です。満腹だという感覚になる前にどんどん食べ続けてしまうことで、体にとって必要以上の食事を食べてしまいがち。この状態が続けば、やがてカロリーオーバーとなり、消化しきれないカロリーの為に体重が増加する、という悪循環になります。

心の健康リスク

食事の時間をゆっくりとることは心のリラックスやリセットの時間にもなりますが、早食いはこのリラックスタイムを短縮してしまいます。しかし、そもそも「時間がないから」という理由で結果として早食いになってしまう、という方もおられるでしょう。仕事や家事育児で追われ、仕方なく早食いをすることで、さらに心の余裕を無くしてしまいます。ストレスを溜め込む生活習慣は、やがて心の健康にも影響を及ぼしてしまうのです。

睡眠の質の低下

消化不良や胃の不快感は、質の良い睡眠を妨げる原因となり得ます。

早食いの場合は、十分に咀嚼せずに食物を飲み込むことで消化管での消化吸収に時間がかかります。そればかりか、十分に消化されないまま胃→十二指腸→小腸……と次々に消化管を進んでしまうと、消化不良の状態になります。

消化不良の状態は、睡眠の質が低下するだけでなく、十分な休息をとれなければ疲れやイライラが積み重なりストレスが解消されず、やがて心の健康を害する可能性があります。

虫歯になりやすい

早食いは咀嚼が不十分となりがちで、食べ物の粒が口の中に残りやすくなります。

本来は咀嚼の際に細かくなった食物が唾液と混ざりながら食道に進んでいきますが、早食いの場合は唾液と混ざる前に嚥下してしまう場合も多いために歯間などに食物のかけらが残りやすくなります。口腔内に残った食物のかけらが原因で細菌の繁殖が進み、虫歯のリスクが高まります。

食道のトラブル

食べ物を早く、そして十分に咀嚼せずに飲み込むことは、食道に負担をかけます。

細かくなる前に飲み込んだ大きな食物は、唾液でスムーズに飲み込める形態になっていないことも多く、食道の壁を刺激するのです。早食いが習慣化している方は長い期間食道に負担をかけることにも繋がり、食道の炎症や食道疾患の原因となる可能性があります。

早食いになりにくい食事のポイント

食事の時間は、日々の生活の中でリラックスしたい大切な時間です。
大切な時間をゆっくりと楽しむためにも、早食いになりにくい食事のポイントを紹介します。

素材の選び方

繊維が多い食材

食物繊維が豊富な食材は噛む回数が増えるため、早食いを防ぎます。
野菜や果物、全粒粉のパンやご飯などがおすすめです。
また、食物繊維は満腹感を得やすいため過食も防げます。

しっかりとした食感のもの

肉や魚、ナッツなどの食材は、その食感から噛む必要があります。
素材にプラスすることで自然と食べるペースが落ち、早食いしにくくなります。

メニューの工夫

一口に多くの味や食感を組み合わせること

サラダなどにクリスピーな野菜やフルーツ、ナッツ、チーズを組み合わせることで、異なる食感や味を一口で楽しむことができます。多くの食感を感じられる品は自然と食べるのに時間がかかり、さらに味わい深く感じることができます。

食事のバランスを考える

主食、副菜、汁物、デザートなど、食事の構成をバランスよく組み立てることで食事のペースが自然と落ち着きます。一品物よりも定食にすれば、それぞれの食材や料理の違いを味わいながら食べることにつながり、食事がより楽しめます。

調理法のアイディア

ゆっくり噛むことを促す調理法

ローストビーフや炙り焼きの魚などしっかりとした食感の料理は、噛むことでその味わいが増すために咀嚼の回数も増え、ゆっくりと食べることができます。

熱々や冷たいものを取り入れる

熱々のスープや冷たいデザートは、その温度から早食いが難しいでしょう。

熱い食べ物は咀嚼している間に温度が下がり、冷たいものは舌の上で溶けるのを待つことになるため「早く食べられない」ともいえます。温度差のある品を取り入れることで食事のペースは自然にゆっくりになり、落ち着いて食事を楽しむことにつながります。

せっかくなら美味しく、ゆっくり食事を楽しみましょう。

まとめ

食事は私たちの生活の中で欠かせない時間であり、健康や心の安定のためにも大切にしたい習慣です。

早食いはさまざまな健康リスクをもたらします。

早食いにより

  • 消化管のトラブル
  • 体重の増加
  • 心の健康リスク
  • 虫歯
  • 食道のトラブル

などにつながります。

特に胃や食道へのダメージは長期的な影響が考えられます。
早食いの習慣は早急に見直し、大きな疾患につながるリスクを避けることが重要です。

食材や食事環境、食事の際に習慣化することで早食い防止に効果をもたらす方法もあります。

食材の選び方
繊維が多い食材やしっかりとした食感のものを選ぶことで、噛む必要が増え自然と食べるスピードが遅くなります。

食事のバランス
食事のメニューをバランスよく組み立て、異なる食感や味を取り入れることで、食事をよりゆっくりと味わうことができます。

環境を整える
食事の場所や環境にも気を使いましょう。

テレビを見ながらの食事やスマホを見ながらの食事は早食いの原因となりやすいです。食べ物に集中して食事をすることを心がけましょう。

水分を取る
食事の前に少量の水を飲むことで、胃に一時的な満腹感を作り食事の量やスピードを調節しやすくなります。

健康な体を維持するために「食事」は必要不可欠なものです。
食事のタイミングや食材に気を配ることはもちろんですが「食べ方」も工夫することが重要です。

「早食い」は長い期間をかけて意識せずに習慣づいてしまったケースが多いため、自覚して改善するしかありません。
しかし、毎日繰り返される食事の際に意識するだけで少しづつ習慣が置き換わるのも事実です。

まずは「一口30回噛むこと」を意識してみましょう。

現在だけでなく、今後の健康を維持するために出来ることを少しずつ。
今日から「早食い」を見直し、より健康な体作りを目指しませんか。