飲酒には中性脂肪を下げる効果もあることをご存知ですか。

一般的に中性脂肪は過剰に増えると動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞などの生活習慣病のリスクを高めることが知られています。カロリー、アルコールの過剰摂取や運動不足が中性脂肪値を上げることはよく知られています。

一方で、適切な飲酒は中性脂肪を下げる仕組みがあるのです。

これまでとは違う常識ですが、今回は「酒が中性脂肪を下げる効果」に着目し、その仕組みや効果的な飲み方、注意すべき点について解説します。

健康診断の中性脂肪が気になりつつ晩酌も楽しみたい、という方はぜひ最後までご覧ください。

正しく知ってる?中性脂肪とは

中性脂肪について正しく知っていますか。

健康診断の血液検査が気になる方の多くは中性脂肪やコレステロールに関心があるでしょう。まずは中性脂肪について正しく理解することが必要かもしれません。

中性脂肪とは?

中性脂肪とは、血液中に存在する脂質の一種であり、体内のエネルギー源として利用されます。食事に含まれる脂肪が分解され中性脂肪として血液中に運ばれますが、中性脂肪が過剰に蓄積すると、生活習慣病のリスクが高くなります。

中性脂肪は人や動物にとって重要なエネルギー源であり、脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の摂取にも不可欠ですが、とりすぎると体脂肪として蓄えられて肥満をまねき、生活習慣病を引き起こします。血液中の中性脂肪の値が150mg/dl以上になると「高トリグリセライド血症」とされ、メタボリックシンドロームの診断基準にも盛りこまれています。

e-ヘルスネット『中性脂肪 / トリグリセリド』より

中性脂肪が高くなるとどのような影響がある?

中性脂肪が増えると血液に中性脂肪が増えます。

いわゆる血液ドロドロの状態になることで善玉のHDLコレステロールが減少し、悪玉のLDLコレステロールを増加させてしまいます。また、脂質の処理がうまくいかず脂質異常症になります。さらに動脈硬化が進行し血管がつまりやすくなり、無理な力が加わることで破れやすくもなります。

また、糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞などの生活習慣病のリスクを増加させる要因にもなるため、中性脂肪は適切にコントロールすることが重要なのです。

中性脂肪を下げる方法

様々な疾患の要因になる中性脂肪を下げるためには、食事や運動、飲酒などを適切にコントロールすることが必要です。

食事の改善

中性脂肪を下げるためには、食事の改善が必要です。中性脂肪が多く含まれる食品を避け、野菜や果物、魚などの健康的な食品を摂取するようにしましょう。また、食物繊維や良質なタンパク質を多く含む食品を積極的に取り入れることで、中性脂肪の蓄積を抑えることができます。

運動の実践

運動によって筋肉を増やし、エネルギー消費を促進することで、中性脂肪を減らすことができます。有酸素運動や筋力トレーニングなど、運動方法は様々ありますが、自分に合った方法を選び、定期的に継続することが大切です。また、運動はストレスを軽減する効果もあり、生活習慣病の予防にもつながります。

飲酒の制限

中性脂肪を下げる適切なアルコール量は1日あたり25gまでが目安です。
過度なアルコール摂取は中性脂肪を増加させる原因となります。
中性脂肪を下げるためにはアルコール摂取量をきちんと把握し、とりすぎに注意することが必要です。

【1週間の目安量】

ビール: 350mL缶12本/500mL缶8本 
チューハイ: 350mL缶7本/500mL缶5本 
ワイン: ボトル2.5本
日本酒: 8合 
焼酎:5合

酒が中性脂肪を下げる?仕組みを解説

適切な飲酒は中性脂肪を下げることができます。一般的にはお酒によって中性脂肪は高くなると言われているにも関わらず、どのような仕組みで「お酒が中性脂肪を下げる」のでしょうか。

アルコールの代謝による効果

お酒が中性脂肪を下げるにはアルコールの代謝による効果があると言われています。お酒を飲むと、肝臓でアルコールが代謝されます。代謝の際に酵素の働きによってアセトアルデヒドに変換されますが、このアセトアルデヒドが中性脂肪の分解を促進する働きを持っていると考えられています。

ポリフェノールなどの成分による効果

赤ワインに含まれるポリフェノールはよく知られているでしょう。ポリフェノールには中性脂肪の生成を抑制する効果があります。このようにお酒の種類によっては中性脂肪を抑制する成分が含まれていますので、中性脂肪が気になる方は赤ワインを選んで飲むのも良いでしょう。ちなみに、ウイスキーにも樽ポリフェノールという成分が含まれると言われています。

適度な酒の摂取が生活習慣病予防につながる

適切な量での酒の摂取は中性脂肪を下げ、ゆくゆくは生活習慣病の予防につながるとされています。例えば、赤ワインに含まれるポリフェノールの一種には動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞などの生活習慣病のリスクを下げる効果があるとされています。

酒で中性脂肪を下げる!効果的な飲み方とは

飲酒で中性脂肪を下げるためには効果的な飲み方を心がけることが大切です。
アルコール量や飲酒のタイミング、食事との併用などを組み合わせるなど飲み方を工夫しましょう。

適度な量を守って飲む

前述したように、適度な量の酒の摂取は中性脂肪を下げる効果があります。では、過度な飲酒にならないようにするためには、どうしたら良いのでしょうか。
適量の飲酒を続けるポイントは1週間の適量を目安にすることが効果的です。
飲みすぎてしまったら翌日は控えるなど余裕をもって調整することで続けやすいでしょう。

飲むタイミングは食事前と食事中

お酒を飲むタイミングには、食事前か食事後かで効果が異なるとされています。
食事前に酒を飲むと中性脂肪の分解が促進されるため効果的です。ただし、空腹時に酒を飲むとアルコールが急速に吸収されるため、アルコール濃度が高くなる可能性があります。そのため、空腹時には適量を意識すると同時に「ゆっくりと」飲むようにしましょう。

アルコール度数が低めの酒を選ぶ

中性脂肪を下げる適量の飲酒のためには、アルコール度数が低めのお酒を選ぶことも効果的です。市販のアルコール度数3〜5%のチューハイや、アルコール度数0.5%の微アルコールビールなども上手に利用しましょう。アルコール度数が高いお酒は少量でも過剰摂取になりやすく、中性脂肪を増やすことがあるため注意が必要です。

飲酒と運動の組み合わせ

中性脂肪を下げるためには、飲酒と運動の組み合わせでさらに効果が増すとされています。例えば、運動後にアルコールを飲んだ場合には中性脂肪の分解が促進されると言われています。また、運動によってアルコールが代謝される速度が速くなるため、二日酔いなどの健康被害を防ぐことができるのです。
このように、飲酒と運動をタイミングよく取り入れることで、中性脂肪にも体調面にも効果が期待できます。

飲みすぎ注意!過剰飲酒は健康被害のリスク

飲酒が中性脂肪に効果があるとはいえ、飲み過ぎには注意が必要です。
あくまでも適量の飲酒に限り中性脂肪を下げる効果があると言われているため、お酒の健康被害についても理解しておきましょう。

過剰摂取は逆効果!酒の健康被害

酒の過剰摂取は、肝臓や脳などの健康に悪影響を与える可能性があります。
適量を超えた飲酒は中性脂肪を高め、生活習慣病である肝硬変や脳卒中、心筋梗塞などのリスクを増加させます。一般的なアルコールは「カロリーが高い」と認識し、過剰摂取は肥満の原因にもなることを忘れないようにしましょう。

知っておくべき「アルコール依存」のリスク

アルコールに依存性があることはご存知かもしれません。酒を飲みすぎるとアルコール依存症になるリスクがありますが、飲酒量は少しずつ増加していきます。このため、依存症の初期段階では飲酒する本人に依存症の自覚がないことも少なくありません。
アルコール依存症になると、身体や精神に様々な問題を引き起こします。依存症の特徴としては「一口だけ」のつもりで飲み始めたお酒が、一口飲んでしまうことで飲酒の制限が外れ、とめどなくお酒を飲んでしまいます。
飲酒の際は自分自身で飲んでいるお酒の量を知り、飲酒量が増えていないか、アルコール依存症になっていないかを常に確認して適切な量を守るようにしましょう。

まとめ

飲酒には中性脂肪を下げる効果があります。
ただし、あくまでも適切な量の飲酒の場合に限るため注意が必要です。
一般的には飲酒による健康被害が懸念され、肝障害や膵炎、脳や血管への負担も増強することがわかっています。
また、アルコール依存症のリスクがあることも忘れてはいけません。
アルコール依存は、自覚がないまま重症化することがあり依存状態になってはじめて自身の症状を把握するケースも多く見られます。
「酒は百薬の長」とも言われるように、上手に付き合えばより健康な体作りにも役立ちます。
中性脂肪が気になるからと、ストレスを感じながら禁酒生活を送るよりも、適度にお酒と付き合いながら健康的な生活を手に入れるほうが、人生を楽しく充実して過ごすことができるかも知れません。

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参考記事

中性脂肪.jp  
https://chusei-shibo.jp/

e-ヘルスネット『アルコールと脂質異常症』
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-014.html