「そんなに太っているわけではないのに、健康診断で中性脂肪が高いとの診断が出た。どうしてだろう?」
「中性脂肪が高めだとどんな病気になってしまうんだろう?」
健康診断で思わぬ反応が出た方は、このような疑問を持つのではないでしょうか?
中性脂肪はある程度必要ですが、あまりにも高いと肥満やさまざまな病気を引き起こしてしまう脂肪です。
中性脂肪がたまらないようにする方法はないのでしょうか?
この記事では、中性脂肪が高い原因やそれに伴う症状、6つの改善方法を紹介します。
中性脂肪が低くなることにより起きる症状についても取り上げます。
中性脂肪とは?
中性脂肪とは、活動のエネルギー源となる血中にある重要な脂肪の一つです。
体内のブドウ糖が不足したときに、不足分を補う役目を果たしています。
ちなみにブドウ糖とは、人間の体内でエネルギーとして利用できる唯一の栄養素です。
中性脂肪は「トリグリセリド」や「トリグリセライド」といった名前でも呼ばれています。
名前の由来は、3本の脂肪酸が「グリセロール」という物質で束ねられているところからきています。
具体的にいうと、腸から吸収されて血液中に出される「外因性トリグリセリド」と、一度肝臓に取り込まれたあとで血液中に出される「内因性トリグリセリド」の2種類に分類されます。
重要な脂肪の一つである中性脂肪ですが、高くなり過ぎても問題です。
次のパートでは、その原因を説明します。
中性脂肪が高くなる原因
健康診断で中性脂肪の検査値が高いと診断された方は、その原因が気になることでしょう。
中性脂肪が高い原因は、「食べ過ぎ」「飲み過ぎ」「運動不足」の3つです。
①脂分や糖分の多い食事の食べ過ぎ
毎日の食事で、脂分・糖分の多い食生活を送っていると、中性脂肪が高くなります。
過剰な脂分・糖分が中性脂肪に変化して、徐々に体内にたまっていくからです。
脂分の多い食事とは、牛肉や豚肉などの脂身の多い部分、バターやチーズ、スナック菓子など。
糖分の多い食事は、ごはんや麺類、ショートケーキやジュースなどです。
②お酒の飲み過ぎ
ごはんを食べるときに、お酒をたくさん飲み過ぎるのも原因の一つです。
毎日お酒をたくさん飲み続けることで、体内に中性脂肪がたまっていくからです。
正確にいえば、体内で大量に取り込まれたアルコールが肝臓で優先的に分解されるので、食べたものが消化されずに中性脂肪としてたまっていくからです。
ワインやビール、梅酒やリキュール系のカクテルなどのお酒を好んで飲む方は注意が必要です。
これらのお酒は糖質が高いので、飲み過ぎると中性脂肪を増やすことになります。
③運動不足
運動不足も原因になります。
普段、事務仕事などで体をあまり動かさない生活を送り続けることで、基礎代謝が低下するからです。
基礎代謝が高い場合は食事で取った脂肪分もエネルギーとして消費されますが、基礎代謝が低い場合はエネルギーが消費されずに中性脂肪としてたまっていきます。
基礎代謝とは、睡眠時やじっと座っているときなど、体を動かさないときにも活動を続けてくれるエネルギー消費量のことです。
運動不足の解消が必要になります。
中性脂肪が高いことで起きる症状とは?
このパートでは、中性脂肪が高いことや低いことにより引き起こされる症状、その症状の判定基準を紹介します。
中性脂肪が高くなると「脂質異常症」を引き起こす
中性脂肪が高くなり過ぎると、「脂質異常症」を引き起こします。
脂質異常症とは、血中の「中性脂肪」「コレステロール」「リン脂質」「遊離脂肪酸」からなる脂質の値に異常が見られる症状です。
特に、中性脂肪や悪玉(LDL)コレステロールの値が高い状態のことを指します。
脂質異常症は、心筋梗塞や脳梗塞などの病気につながっていくので注意が必要です。
健康診断で中性脂肪や悪玉(LDL)コレステロールの値が高いと判定されたら、脂質異常症の疑いがあるので、医師に相談して適切な治療のアドバイスを受けましょう。
ところで「コレステロールは悪い」というイメージが定着していますが、それは間違いです。
コレステロールは、女性ホルモンや男性ホルモンをつくり出すのに重要な役目を持っています。
コレステロールが悪いのではなく、高くなり過ぎるのが問題なのです。
中性脂肪が低くても「脂質異常症」?
中性脂肪が低くなり過ぎても、「脂質脂肪症」の疑いがあります。
善玉(HDL)コレステロールの値が正常値より低い状態のことを指します。
原因は、ダイエットで一日の食事量を極端に制限したり、野菜しか食べなかったりといった、糖質・脂質制限によるエネルギー不足によるものです。
中性脂肪が低くなり過ぎることで、疲れやすかったり、元気がなくなったりなどの症状があらわれます。
なぜ、このような症状が出るかというと、活動のエネルギー源となる中性脂肪の低下により、本来の役割である「体温を一定に保つ機能」や「内臓を守る機能」が低下してしまうためです。
また、ほかの病気の原因が隠されている可能性も。
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)です。
バセドウ病とは、甲状腺ホルモンの過剰分泌により体の新陳代謝が活発に行なわれ、中性脂肪やコレステロール値の低下・急激な体重の減少を引き起こす自己免疫疾患のこと。
これらの症状が起きないようにするためにも、バランスの取れた食事を取ることが大切になってきます。
「脂質異常症」の判定基準
ここで、「脂質異常症」の判定基準を紹介します。
判定基準は、下記のとおりです。
(正常値)
値 | 判定 |
中性脂肪 30~149mg/dl | 正常 |
悪玉(LDL)コレステロール 70~140mg/dl | 正常 |
善玉(HDL)コレステロール 40~70mg/dl | 正常 |
(異常値)
値 | 判定 |
中性脂肪 150mg/dl以上 | 高トリグリセライド(中性脂肪)血症 |
悪玉(LDL)コレステロール 140mg/dl以上 | 高LDLコレステロール血症 |
善玉(HDL)コレステロール40mg/dl未満 | 低HDLコレステロール血症 |
健康診断の結果を見る際の参考にしてみてくださいね。
中性脂肪を減らすために意識したい6つの工夫
ここでは中性脂肪を減らすための6つの工夫を紹介します。
①脂質・糖質を抑える
中性脂肪が高いといわれている方は、食生活を見直しましょう。
まずは、脂質・糖質を抑えることが大事です。
脂質の多い食事は、揚げ物や牛・豚などのバラ肉、バターやマーガリン、アイスクリームなどがあげられます。
糖質が多い食事は、ご飯や麺類、パンなどの炭水化物、スナック菓子やスイーツ、砂糖が多く含まれたジュースなどです。
脂質・糖質を抑える対策として、「毎日食べるご飯の量を半分にする」「玄米食に切り替える」「お肉は脂身の少ないヒレ肉などの部位を食べるようにする」などの工夫が大切です。
②食物繊維が豊富な食品を食べるようにする
中性脂肪を減らすために、食物繊維を取ることも有効。
食物繊維は、食事で取ったコレステロールを体の外へ出してくれる役割があるからです。
具体的な食品はトマト・ほうれん草・かぼちゃなどの緑黄色野菜、ジャガイモ・サツマイモなどのイモ類、納豆・豆腐などの豆類、キクラゲや干ししいたけなどのキノコ類やわかめ・のりなどの海藻類です。
③コレステロール値を下げる不飽和脂肪酸を意識的に取る
コレステロール値を下げる不飽和脂肪酸を取ることも、中性脂肪対策になります。
不飽和脂肪酸は、体内のコレステロール値を下げる脂肪酸です。
不飽和脂肪酸のなかには、魚の油に含まれる多価不飽和脂肪酸n-3(オメガ3)系脂肪酸に属する「DHA(ドコサヘキサエン酸)」や「EPA((エイコサペンタエン酸))」、オリーブオイルやなたね油などの植物油に多く含まれるオレイン酸などがあります。
n-3(オメガ3)系脂肪酸は血中の中性脂肪を低下させる効果、オレイン酸は悪玉(LDL)コレステロールを下げる効果をそれぞれ期待できます。
ちなみに、DHAやEPAが多く含まれる魚は、サバやさんま、まぐろやブリなどです。
④ポリフェノールが豊富な食品を取る
ポリフェノールが豊富な食品も、中性脂肪を抑えるのに有効。
ポリフェノールには、「血管が詰まることにより起きる動脈硬化の予防」や「高血圧などを抑える抗酸化作用」があるからです。
ポリフェノールが含まれる食品は、8,000種類以上あるといわれています。
具体的な食品は紅茶や緑茶に含まれるカテキン、ナスや紫いも、ブルーベリーなどに含まれるアントシアニン、サツマイモ・ごぼうなどに含まれるクロロゲン酸類などがあります。
カテキンには、脂質の吸収や血糖値の上昇を抑える効果、アントシアニンには動脈硬化や糖尿病の予防効果、クロロゲン酸類には脂肪肝や糖尿病の予防効果を期待できます。
⑤食べる順番に気をつける
中性脂肪を減らしたいなら、食べる順番にも気をつけることが大事です。
食べる順番は、①食物繊維が含まれる野菜類 → ②肉や魚などのたんぱく質 → ③ご飯・麵・パンなどの炭水化物の順となります。
まずは、野菜やキノコ、海藻類などの食物繊維を食べきりましょう。
血糖値が急に上がることを防ぐとともに満腹感を得られるので、摂取カロリーを減らすことができるためです。
その次に肉や魚などのたんぱく質を取ります。
消化するのに時間がかかるので、糖質の吸収がしやすくなるためです。血糖値を上がりにくくします。
最後にご飯・麵・パンなどの炭水化物です。食後の血糖値の上昇を抑えることができます。
よく噛んでゆっくりと食べると、より効果的。早食いは中性脂肪が上昇してしまう原因となるからです。
⑥適度な有酸素運動を取り入れる
適度な運動を取り入れることも中性脂肪対策になります。
特に有酸素運動が有効です。
具体的には、ウォーキングや速歩、軽いジョギングや踏み台昇降などの運動になります。
一日に30分程の運動を毎日続けることが理想です。もし、できない場合は一日のうちに数回に分けて合計30分を目標にしましょう。
そして継続的に行なうことが大事です。
血中の脂肪値は、数ヶ月以上の継続的な運動により徐々に効果が期待できるからです。
自分の一日に必要なエネルギー摂取量の計算式
ここでは、自分にとって必要な一日のエネルギー摂取量の計算式を紹介します。
その計算式は、
基礎代謝量×身体活動レベル=一日に必要な推定エネルギー必要量(Kcal/日) |
で表わすことができます。
基礎代謝量とは、起きがけや空腹時などリラックスした状態での代謝量のことです。
その計算式は、「体重1kgあたりの基礎代謝の値」と「該当する年齢の参照体重の値」で割り出すことができます。
基礎代謝基準値(Kcal/kg/日)×参照体重(kg)=基礎代謝量 |
です。
例えば、18歳〜64歳までの女性の基礎代謝量は、下記のとおりです。
年齢 | 基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日) | 参照体重(kg) | 基礎代謝量(kcal/日) |
18 – 29 | 22.1 | 50.3 | 1110 |
30 – 49 | 21.9 | 53.0 | 1160 |
50 – 64 | 20.7 | 53.8 | 1110 |
(引用元:「日本医師会 1日に必要なカロリー 推定エネルギー必要量」をもとに作成) https://www.med.or.jp/forest/health/eat/01.html
18歳〜64歳までの女性の身体活動レベルは、 1~3で表わすことができます。
・レベル 1は、在宅での仕事が中心で、毎日の生活であまり動くことがないケース。・レベル 2は、デスクワーク中心だが、出勤時の移動や買い物、軽い運動をしているケース。・レベル3は、立ち仕事中心で、休日はスポーツで汗を流す習慣があるケース。 |
それをもとに表わしたのが下記の表です。
年齢 | レベル 1(低い) | レベル2(ふつう) | レベル3(高い) |
18 – 29 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
30 – 49 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
50 – 64 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
(引用元:「日本医師会 1日に必要なカロリー 推定エネルギー必要量」をもとに作成) https://www.med.or.jp/forest/health/eat/01.html
これらの表をもとに、28歳の女性を例に、「一日に必要な推定エネルギー必要量」を割り出してみましょう。
普段は事務でデスクワーク中心。出勤以外あまり動き回ることのない生活です。
(28歳女性の一日のエネルギー必要量)
(基礎代謝量)1110×(身体活動レベル)レベル2=1942.5 Kcal/日 |
一日に必要なエネルギー摂取量は、1942Kcalであることがわかります。
この計算方法を参考に、一日に必要なエネルギー摂取量を把握してみてはいかがでしょうか。
気になるなら病院で適切なアドバイスを!
中性脂肪が高めと診断されて気になる方は、病院で適切な診察を受け、アドバイスをもらいましょう。
病院に行く際、特に体の不調を感じられず脂質異常症とのみ診断された場合は「一般の内科、体の不調がある場合は「循環器内科」や「血管外科」で診断を受けましょう。
脂質異常症の診断は、食事療法・運動療法・薬物療法の3つです。
食事療法では、一日に必要なカロリー量の把握からはじめ、食事の取り方のアドバイスを受けます。
運動療法は、有酸素運動や筋トレ、ストレッチなどの運動を行なう指導です。
薬物療法は、コレステロール値を下げる薬・便として外に出す薬・中性脂肪を下げる薬などが処方されます。
薬物療法は、食事療法や運動療法で脂質の改善が見られず、動脈硬化などの危険が高いと判断される場合にのみ検討される方法です。
まとめ
今回は、中性脂肪が高い原因やそれに伴う症状、6つの改善方法などを紹介しました。
中性脂肪が高くなるのは、
- 脂分や糖分の多い食事の食べ過ぎ
- お酒の飲み過ぎ
- 運動不足
などが原因とわかりました。
中性脂肪が高いために「脂質異常症」と診断されると、心筋梗塞や脳梗塞などの深刻な病気を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
そのためには、毎日の食事で
- 糖質や脂質を抑える
- 食物繊維が豊富な食品を食べる
- 不飽和脂肪酸を意識的に取る
- ポリフェノールが豊富な食品を取る
- 食べる順番に気をつける
- 適度な運動をする
の6つが重要です。
これらの方法で、中性脂肪が高い悩みを改善して、中性脂肪が高くならないようにしましょう。
適切な方法で、中性脂肪の値が低くなるといいですね。