健康診断で中性脂肪の数値が高いと指摘されると、食事や生活習慣を見直す人も多いのではないでしょうか。しかし、中性脂肪を減らすためには、どのような食事や運動を心がければよいのか分からないという人もいるでしょう。
特に食事は毎日行なうものなので、いくら「食事に気をつけよう!」と思っても、ストレスがたまっていると継続するのは難しいでしょう。
そこで今回は、中性脂肪を下げる効果が期待できる食べ物や運動についてご紹介します。
中性脂肪とはどのようなもの?
中性脂肪とは血液中に存在する脂肪の一種で、食事からのエネルギーが不足したときに、血液中のエネルギー(ブドウ糖)不足を補う役割を担っています。中性脂肪が増える原因は脂肪の取り過ぎ(脂身の多い肉類)と思われがちですが、実は中性脂肪が増える原因は「炭水化物(糖質・砂糖)の取り過ぎ」でもあるのです。
例えば、お菓子やスイーツを毎日食べる、白米や麺類(パスタ、うどん、ラーメン)をたくさん食べる、砂糖たっぷりの甘いジュースを毎日飲む、などです。
食事で摂取した脂質や糖質は、胃や腸で吸収されて血液に送り込まれ、全身のエネルギー源となります。しかし、血液中の脂質や糖質がエネルギーとして消化されないと、これらを材料に肝臓で中性脂肪が合成されます。
エネルギーとして消費されなかった血液中の中性脂肪は、内臓脂肪や皮下脂肪として蓄積され、生活習慣病のリスクが高まります。この他にも、中性脂肪を増やす原因として、「お酒の飲み過ぎ」「運動不足」などがあげられます。
お酒をよく飲む方、たくさん飲む方は、純アルコールを一日25g以下(ビール500ml、日本酒1合、ワイン2杯)に抑え、週に二日以上休肝日を設けるようにしましょう。
制限のし過ぎはNG!中性脂肪を下げるうえで注意すべき食事方法
ここでは中性脂肪を下げるうえで注意すべき食事方法について解説していきます。
極端な糖質制限
メディアでは糖質制限や糖質制限に関する情報が多く、それに関連した商品もたくさん出ています。しかし、本当に糖質は悪いものなのでしょうか?そもそも、糖質とは炭水化物から食物繊維を除いたものです。取り過ぎるとたしかに肥満の原因になったり、中性脂肪が増えたりします。
しかし、糖質は人間が活動するためのエネルギー源です。特に脳は血液中の炭水化物(ブドウ糖)を主なエネルギー源としているので、炭水化物が極端に不足すると、意識障害などの障害を引き起こすおそれがあります。完全に糖質をカットするのではなく、「食べ過ぎに注意する」ことが必要です。
食事で炭水化物を制限するのではなく、加工された炭水化物を制限し、代わりに複合炭水化物や天然の糖質を取ることでバランスを取るとよいでしょう。野菜や果物など、栄養価の高い天然の炭水化物を取ることは、健康的な食生活に不可欠な要素として広く受け入れられています。
さらに、糖質制限食で不足しがちなビタミンやミネラルも、多くの炭水化物源から摂取することができます。
脂質を全く摂取しない食事
中性脂肪を減らしたいからといって、油を全く使わない食事も好ましくありません。
たしかに、油がギトギトしている揚げ物やトランス脂肪酸を含むマーガリン、砂糖や乳脂肪たっぷりの高脂肪ケーキはあまり良くありません。たまに食べる分にはいいかもしれませんが、日常的に食べると中性脂肪が一気に増え、肥満が加速されます。
しかしその一方で、魚油に豊富に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)には、血液をサラサラにする効果が期待できます。そこで、エクストラバージンオリーブオイル、ココナッツオイル、アボカドオイルなど、良質な油脂を中心に摂取することをおすすめします。
これらの健康的な脂肪は、最適な栄養吸収を促進し、満腹感を高め、体重管理を助ける可能性もあります。良質な健康脂肪は健康全般に役立つものであり、健康的でバランスの取れた食事に簡単に取り入れることができます。
大切なのは、油脂を完全にカットすることではなく、「良質な油を摂取する」ことと、「正しい方法で食生活に取り入れる」ことです。
コレステロールを全く取らない
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が体内で増えると、血液がドロドロになり、脳梗塞などを引き起こしやすくなります。しかし、コレステロールを全く取らない食事も良くありません。コレステロールは、健康維持に必要な栄養素でもあるのです。コレステロールはリン脂質とともに、細胞膜の材料となります。
体内では常に古い細胞が死んで、新しい細胞に置き換わっています。そのため、コレステロールは新しい細胞の材料として欠かせないのです。また、コレステロールはさまざまなホルモンの材料にもなっています。
以前は「卵は一日1個まで」といわれていた時代もありましたが、2015年に厚生労働省が日本人の食事摂取基準からコレステロールの上限を撤廃しました。とはいえ、食べ過ぎると栄養のバランスが崩れるので、適度にバランス良く摂取することが大切です。
コレステロールは、体内の細胞膜構造の重要な部分を形成するのを助け、体内で自然にホルモンが生成されるのをサポートします。
中性脂肪を下げるうえで効果が期待できる食品・栄養素
ここからは中性脂肪を下げるうえで効果が期待できる食品、栄養素について解説していきます。
魚介類
魚介類には、多価不飽和脂肪酸(必須脂肪酸)であるオメガ3系脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれています。
青魚に多く含まれるEPAやDHAには、血液をサラサラにする効果や中性脂肪を下げる効果があります。週に数回、魚介類を食べるようにすると、EPAとDHAの量を増やすきっかけになります。EPAとDHAは体内で生成できない必須脂肪酸なので、日頃からこれらを含む食品を摂取することが欠かせません。
魚介類は低カロリー・低脂肪なので、バランスの良い食事に取り入れたいヘルシーな食材です。魚介類に含まれるミネラルやビタミンは、脳の働きを整え、心臓や目を保護する働きがあります。
DHA・EPAの一日の推奨摂取量は1g(1000mg)以上ですが、これを摂取するにはマグロ(トロ)3~5切れが一日の目安だといわれています。
特におすすめの食材
イワシ | EPA:1100ミリグラムDHA:870ミリグラム |
サバ | EPA:1800ミリグラムDHA:2600ミリグラム |
マグロ(脂身) | EPA:1400ミリグラムDHA:3200ミリグラム |
サンマ | EPA:1500ミリグラムDHA:2200ミリグラム |
食物繊維
野菜やきのこ、海藻などに多く含まれる水溶性食物繊維は、糖質や脂質の吸収を緩やかにする働きがあります。セロリ、キュウリ、リンゴなど、水溶性食物繊維を多く含む食品から積極的に取るようにしましょう。
玉ねぎ、長ねぎ、にんにくには、アリシン(硫化アリル)とケルセチンが含まれています。
これらは血液をサラサラにし、血圧を下げ、脂肪を吸収する働きがあると考えられているので、バランスの良い食事に取り入れるとよいでしょう。
海藻類 | 5.8グラム(乾燥わかめ、素干し、水戻し) |
きのこ類 | えのき(3.9グラム)、しいたけ(4.2グラム)など |
野菜類全般 | モロヘイヤ(15.5グラム)、しそ(19.7グラム)など |
玉ねぎ | 1.6グラム |
青ねぎ | 2.2グラム |
植物性たんぱく質
植物性タンパク質を豊富に含む大豆製品は、血液中の中性脂肪を減らす働きがあります。納豆、豆腐、おから、豆乳などの大豆製品を毎日の食事に取り入れましょう。大豆は植物性タンパク質が豊富なだけでなく、オメガ3脂肪酸などの必須脂肪酸、食物繊維、ビタミン、ミネラルの摂取にも役立っています。
大豆製品は低炭水化物ですが、インゲン豆、レンズ豆、空豆、ひよこ豆など、他の豆類は炭水化物が多いので、食べ過ぎには注意をしましょう。
納豆 | 17グラム |
豆腐 | 4.9グラム |
おから | 6グラム |
豆乳 | 3.6グラム |
中性脂肪を下げるうえで運動が効果的な理由
ここでは中性脂肪を下げるうえで運動が効果的な理由について解説していきます。
基礎代謝が向上する
長期間の運動で筋肉量が増えると、基礎代謝量が上がり、エネルギーを消費しやすくなります。そもそも「基礎代謝量」とは、人間が生きていくために最低限必要なエネルギー量のことで、性別や年齢、体重、運動量などによって大きく異なります。
例えば、同じ性別、年齢、体重の女性でも、アスリートと主婦では一日の基礎代謝量に大きな差があります。
運動を始めて一日の基礎代謝量を増やせば、エネルギーを消費しやすい体に変わり、中性脂肪を効率よく減らすことができるのです。体を動かして基礎代謝量が増えると、自然に代謝効率の高い体が作られ、カロリー消費量が増えます。
運動は高血圧、糖尿病、心血管疾患などの病気のリスクを減らすことが知られています。
定期的に体を動かすことで、基礎代謝量を増やすだけでなく、生活全体の質も向上させることが可能です。
内臓脂肪や皮下脂肪を減らす効果が期待できる
運動を始めて血液中のエネルギー(炭水化物や脂質)を消費すれば、肝臓で中性脂肪が合成されるのを防ぐことができます。
血液中のエネルギー(炭水化物や脂質)が不足すると、血液中の中性脂肪を分解してエネルギーに変換するため、自然に中性脂肪が減少します。そして、運動を始めれば、中性脂肪を減らすだけでなく、中性脂肪が蓄積されている内臓脂肪や皮下脂肪も減らすことができるのです。
有酸素運動は代謝を上げ、脂肪をエネルギーとして利用する体質を改善するため、脂肪を減らすには最適な運動といえます。筋トレのような無酸素運動は、筋肉を増強して引き締め、カロリーや脂肪を燃焼する能力を高めるので、最適な結果を得るために取り入れるべきでしょう。
中性脂肪を減らすために、低脂肪のタンパク質、炭水化物、良質な脂肪を含むバランスの取れた食事を心がけてください。
望ましい体重を達成するために、一日の食事量を意識し、摂取カロリーを管理しましょう。前向きに考え、継続することで、中性脂肪を減らすことに成功する可能性が高くなります。
疾病リスクも減少する
運動は血管を拡張するため血圧を下げ、食事から摂取した炭水化物をエネルギーとして消費するため血糖値を下げます。運動は善玉コレステロール(HDLコレステロール)を上昇させ、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を効果的に減少させます。
運動を始めることで、冒頭で紹介した血栓や動脈硬化といった病気や、高血圧、糖尿病といった生活習慣病のリスクを減らすことが可能です。
定期的な運動習慣は、心臓血管の健康増進、心身の健康増進、ストレスレベルの低下、睡眠の質の向上、不安や抑うつの軽減、筋力と柔軟性の強化、エネルギーレベルの向上、体脂肪率の低下、特定の種類の癌が発症するリスクの低下、骨の強化、骨粗しょう症のリスク軽減、体重コントロール、総合的な自信の向上、などにつながります。
運動には多くの機会や健康上の利点があり、それだけでライフスタイルに良い影響を与えることができるでしょう。
中性脂肪を下げる運動のポイント
ここからは中性脂肪を下げるための運動のポイントについて解説していきます。
無酸素運動(筋トレ)のポイント
筋トレと聞くと「ジムに通う」「器具が必要」と思う方も多いと思いますが、筋トレは特別な器具やスペースがなくても、今すぐにでも自宅で簡単に行なうことができます。もちろん、長い間運動をしていない人は、無理にハードな筋トレを始める必要はありません。
まずはストレッチから始めて、運動に慣れてきたら筋トレを取り入れ、徐々に運動強度を上げていくのが良いでしょう。
ただし、ストレッチでも、正しいフォームや姿勢に配慮する必要があります。
筋トレは上半身、下半身、腹筋と、重点と強度に応じて分けることが大切です。自分の筋肉を鍛える場合、スクワット、腕立て伏せなど簡単な動作を体調やニーズに応じて組み合わせると効率的です。
有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)のポイント
体が脂肪をエネルギーとして燃焼し始めるのは、有酸素運動を始めてから20分程度です。そのため、有酸素運動は一日30分以上&週3回以上続けることをおすすめします。もちろん、10分程度の運動でも血液中のエネルギーは消費されますので、まとまった時間がとれない方は、一日に数回に分けて有酸素運動を行なっても構いません。
有酸素運動の時間を徐々に長くしていくことも、脂肪燃焼やダイエットの補助に効果的です。有酸素運動は、最初はゆっくり、短時間から始めて、徐々に時間を増やしていくのが良いでしょう。
中性脂肪を下げるのにおすすめな運動メニュー
ここでは中性脂肪を下げるためにおすすめな運動メニューについて解説していきます。
自重スクワット
中性脂肪を減らすための筋トレとして、最もおすすめなのが「自重スクワット」です。自重スクワットは非常にシンプルなトレーニングですが、大腿四頭筋、ハムストリングス、大殿筋など下半身の大きな筋肉をまとめて鍛えることができます。
正しい自重スクワットの方法
- 脚を肩幅より少し広く開く(両手は胸でクロス)
- つま先と膝がやや外側に向くように立つ
- 太ももと床が並行になるまでゆっくりと膝を曲げる
- 135度くらいの角度までゆっくりと膝を伸ばす
- ③と④を5回繰り返す
基本的には、上記を朝と晩に1セットずつ行ない、徐々に回数とセット数を増やしていきます。3の膝を曲げるときは、膝がつま先から伸びないようにすることが大切です。膝を曲げ終わったら、動きを止めずにすぐに膝を伸ばし始めます。膝の角度を135度に保ち、すぐに3の動作を始めることが大切です。
正しいフォームで行なうために、スクワットの足は肩幅、腰幅、あるいはもっと狭くても、体が安定していると感じられ、足全体が地面に着いていることが目視で確認できる範囲であれば、どちらでも構いません。首と背骨を自然に伸ばし、あごを少し引いて、肩甲骨を少し引っ込めます。
可能であれば、鏡の前で自重スクワットを行ない、自分の姿勢を確認しましょう。
体幹トレーニング(プランク)
自重スクワットと並んで、中性脂肪を減らすための筋トレに取り入れるべき体幹トレーニングが「プランク」です。プランクは正しい姿勢を数十秒キープするだけで、腹筋(腹直筋、腹斜筋)、背筋、上腕三頭筋(腕)、大臀筋など体幹(胴体)の筋肉を鍛えることが可能です。
プランクのポーズは、腹筋、大臀筋、ハムストリングス、上半身など、全身を強化し、引き締める全身運動です。この体幹強化エクササイズには、筋肉を鍛える以外にも重要なポイントがあります。体のバランスを改善し、腰痛を予防することができるのです。
正しい体幹トレーニング(プランク)の方法
- 床にうつ伏せになる
- 足を揃えた状態でつま先を立てる
- 肘で上半身を起こす
- 全身を板のように一直線にして30秒キープ
- 30秒のインターバル
- 3~5を繰り返す
最初は20~30秒のプランクから始め、徐々に秒数と回数を増やしていきます。
プランクで最も重要なのは正しい姿勢を保つことで、肘は90度に曲げ、顔は下げすぎず、上半身は両肩で軽く引き締めましょう。大臀筋を意識して、過度に上げ下げせず、腹筋を意識することが効果的です。
腰に負担がかかっている場合は、つま先ではなく膝を立てて支えることも必要です。肘の違和感を軽減するために、タオルなどを敷くことをおすすめします。セルフカウントも可能ですが、時間や強度を把握しやすいという点で、プランクトレーニング専用のスマートフォンアプリを活用すると良いでしょう。
トレーニングの効果を最大化するためには、運動の質とフォームに注意する必要があります。
ウォーキング・ジョギング
中性脂肪を減らすための有酸素運動として、ウォーキングやジョギングが推奨されています。ただし、今まで運動をしたことがない人がいきなりジョギングを始めると、息切れしてしまい、有酸素運動ではなく無酸素運動になってしまうので、注意が必要です。
最初は少し速めのウォーキングから始めて、徐々に運動強度を上げていきましょう。これは、無理を感じず、持続的に体力レベルを向上させるために、時間をかけて行なうのが良いでしょう。
日常生活の中にウォーキングを取り入れることで、付随的な運動量を増やすこともできます。
例えば、電車で帰宅する際、一つ手前の駅で降りて、目的地まで歩き続けるという方法があります。
買い物も、いつもより速いペースで歩けば、消費カロリーが増えるので、活動量を増やすチャンスです。スーパーに買い物に行くときは、自転車から徒歩に切り替えると良いでしょう。
まとめ
中性脂肪は、体にとって必要なエネルギー源です。しかし、過剰に蓄積されると、肥満や動脈硬化などさまざまな問題を引き起こす可能性があります。そもそも中性脂肪が増える原因は、間違った食生活であることが多いので、健康診断などで中性脂肪が高いと指摘されたら、食生活を見直すことが大切です。
不健康な食品や加工食品を控えるとともに、摂取カロリーを制限することで、中性脂肪値を下げ、全体的に体重を減らすことができます。
中性脂肪を下げるためには、運動も欠かせません。ランニングやウォーキングなど、適度な運動をすることで、中性脂肪の蓄積を抑えるとともに、効果的に代謝を上げることが可能です。
脂肪は長い時間をかけて蓄積されることが多いので、取り除くのに時間がかかります。
じっくりと腰を据えて、適度な運動や生活習慣の改善に取り組みましょう。