そのタンパク質ダイエットは正解?それとも間違い?

ランチタイム。ふとし君はドヤ顔で今日のお弁当を取り出しました。
さぞ豪華な昼ごはんかと思いきや、袋から出てきたのはコンビニで売っているサラダチキンが味違いで3つ。たったそれだけです。

あら、今日のランチはサラダチキンだけなの?

ダイエット小学校
教頭先生

えへへ、今日はダイエットを意識したメニューで~す!

ふとし君

タンパク質を摂ろうとするのはいいけど、ねぇ……

ダイエット小学校
教頭先生

えっ、何か間違ってますか???

ふとし君

ダイエット中のふとし君、今日のランチはサラダチキンだけです。
それを見た教頭先生は微妙な顔をしたのですが、何が問題なのでしょうか?

タンパク質ダイエットの落とし穴!クイズ
タンパク質ダイエット中のふとし君、今日のランチはサラダチキンだけです。 それを見た教頭先生は微妙な顔をしたのですが、何が問題なのでしょうか?
  1. ①良質なタンパク質ではない
  2. ②塩分の摂り過ぎになる
  3. ③栄養バランスが良くない

選択肢①の解説:「良質なタンパク質」とは?

選択肢②の解説:タンパク質を摂り過ぎると…?

選択肢③の解説:タンパク質と栄養バランス

ダイエット中は「良質なタンパク質」を意識して摂ろう!

ダイエットでタンパク質に注目するのは、良いことです!タンパク質は、ダイエット中もしっかり摂っておきたい栄養素です。

タンパク質(プロテイン)は、糖質(炭水化物)や脂質とともにエネルギー源となる三大栄養素の一つです。また、「身体をつくる」という大事な機能も持っています。実に人間の身体の約半分はタンパク質でできています(水分を除く)。

タンパク質からつくられる身体のパーツとして、多くの人がすぐに思い浮かべるのは「筋肉」ではないでしょうか。タンパク質は筋肉だけでなく、内臓、皮膚、毛などになりますし、身体の機能を調節するホルモンや酵素、感染から身体を守る抗体などの材料にもなります。この意味では、三大栄養素のなかでも特に重要な栄養素と言ってもいいかもしれません。

タンパク質は、基本的にどの食品にも多少なりとも含まれています。タンパク質は生き物の構成成分であり、われわれは生き物(動物・植物)を食べているわけですからね。

しかし、身体をつくるための材料として便利なタンパク質と、ちょっと効率の悪いタンパク質があります。前者を「良質なタンパク質」と呼びます。

「良質なタンパク質」とは?

タンパク質が良質かどうかは、「必須アミノ酸」をどれだけバランス良く含んでいるかで決まります。

どういうことかというと(ちょっと細かい話になりますが)、タンパク質は20種類のアミノ酸がたくさんつながりあった物質です。この20種類のアミノ酸のうち、11種類は体内で他の材料(糖質や脂質)を使ってなんとか作り出せるのですが、残り9種類は頑張っても作れないので食事から摂るしかありません。

この9種類のことを「必須アミノ酸」(ロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、トレオニン、トリプトファン、バリン)と呼びます。これら必須アミノ酸をバランス良く含んでいるタンパク質が、人間にとって「良質なたんぱく質」なのです。

アミノ酸スコアが高く、良質なタンパク質を含む食品は?

では、良質なタンパク質はどの食品に多く含まれているのでしょうか。簡単な見分け方は「良質なタンパク質=動物性タンパク質」です。動物由来のタンパク質、すなわち牛・豚・鶏の肉、魚、卵、牛乳などに含まれるタンパク質は「良質」です。

実際に、いくつかの食品でタンパク質が良質かどうかを評価する指標(アミノ酸スコア;100が最高、0が最低)を調べた結果が下記になります。

日本食品分析センター:食品たんぱく質の栄養価としての「アミノ酸スコア」より引用・一部改変

動物性タンパク質のアミノ酸スコアはほとんどが100(満点)です。一方、米やトマト、みかんなど植物由来のタンパク質では数値が低くなっているので、良質であるとは言えません。ただし大豆だけは100です。植物由来でも豆類由来のタンパク質は良質なタンパク質であると覚えておくといいでしょう。

さて、ここまで読めば、冒頭のクイズで出した選択肢①「良質なタンパク質ではない」は間違いであることがご理解いただけると思います。サラダチキン、すなわち鶏肉は動物性タンパク質ですから、良質なタンパク質ですね。

タンパク質ダイエットの落とし穴!クイズ①の答え
ダイエット中のふとし君、今日のランチはサラダチキンだけです。 それを見た教頭先生は微妙な顔をしたのですが、何が問題なのでしょうか?
  1. ①良質なタンパク質ではない ⇒×:良質なタンパク質である
  2. ②塩分の摂り過ぎになる
  3. ③栄養バランスが良くない

良質なタンパク質なんだから、いっぱい食べるようにしよう!

ふとし君

やっぱりそう考えるわよね……

ダイエット小学校
教頭先生

えっ、ダメなんですか???

ふとし君

タンパク質を摂り過ぎると…?

これまでに解説したように、タンパク質はとても重要な栄養素なので、しっかりと摂るようにしましょう。

しかし、いくら大切だとは言っても、同じ栄養素だけをたくさん摂るのは考えものです。良質なタンパク質をたくさん摂るためには、肉や魚、卵などを大量に食べることになります。そのときに問題になるのが、脂質や塩分の摂り過ぎです。

タンパク質ダイエットをするときは脂質に注意

肉や魚、卵には、タンパク質だけでなく脂質も多く含まれています。例えば、食卓に上がる頻度の高い豚バラ肉(生)は100gのうちタンパク質は13g、脂質は40gです。タンパク質よりも脂質の方が多いですよね。鶏もも肉(生)の場合は100g中にタンパク質は17g、脂質は14gとなります。タンパク質をたくさん摂ろうとすると、脂質もたくさん摂れてしまうというのが注意すべき点です。

この問題を解決するには、同じ肉でも脂の少ないものを選ぶことです。例えば豚ヒレ肉(生)100gならタンパク質は23g、脂質は2gですし、鶏むね肉(生)100gならタンパク質は21g、脂質は6gです。上記と比較するとだいぶ違いますよね。

ダイエット中にタンパク質を補充するなら、ジューシーな脂が美味しい肉は我慢するか、少しだけに留めるようにしてください。

サラダチキンは脂が少ない部位だし、ゆでただけだから調理に油も使ってないですよ!

ふとし君

確かにカロリーは少ないし、良質なタンパク質がたくさん摂れる優秀な食品よね。でも……

ダイエット小学校
教頭先生

もぅ~!どこがダメなんですかっ!

ふとし君

タンパク質ダイエットをするときは塩分に注意

もう一つ、タンパク質をたくさん摂るときに気を付けたいポイントがあります。それは「塩分」です。タンパク質を多く含む食品を調理するとき、実は塩分を多く使いがちなのです。特に脂が少なく淡白な食材には、塩分を強めにつけて美味しく感じるように工夫している場合が多いので注意が必要です。

実際に、一般的な市販のサラダチキン1つには塩分が1~2gほど含まれています。1日の塩分量は少なければ少ないほどよく、できれば1日6~7g未満を目指したいところです。この目標を達成するのは現実的になかなか難しいのですが、せめて「塩分控えめを心がける」ようにしたいところです。特に血圧の高い人や腎臓の機能が落ちている人は気を付ける必要があります。

タンパク質ダイエットの落とし穴!クイズ②の答え
タンパク質ダイエット中のふとし君、今日のランチはサラダチキンだけです。 それを見た教頭先生は微妙な顔をしたのですが、何が問題なのでしょうか?
  1. ①良質なタンパク質ではない
  2. ②塩分の摂り過ぎになる ⇒○:塩分や脂質の摂り過ぎになりやすい
  3. ③栄養バランスが良くない

ぬああ…そういう落とし穴があるのかぁ~!

ふとし君

そもそも特定の食品だけをたくさん食べようとすることが、間違いなのよね~

ダイエット小学校
教頭先生

じゃあ、タンパク質はどれだけ摂ればいいんですか?

ふとし君

一般的な生活を送っている30~40代の男性なら、1日の食事でタンパク質を65gは摂りたいところです。タンパク質を多めに摂りたい場合は、88~135gが目安となります。女性なら1日50gは達成するようにして、できれば67~103g摂れるといいでしょう。

主な食品(100gあたり)のタンパク質は、豚ヒレ肉(生)23g、鶏むね肉(生)21g、牛ヒレ肉(生)19g、さば缶(水煮)21g、豆腐(木綿)7g、牛乳3.3gです。

こう見ると、タンパク質を50g以上摂れていない日もあるかもしれませんね。タンパク質をもっと摂りたいけれど、脂質や塩分などが気になる人は、サプリメントとしてプロテインを活用することを検討してもいいかもしれません。

糖質制限や筋トレの際に気を付けたい!タンパク質との栄養バランス

では、脂質や塩分に気を付けながらであれば、タンパク質を中心とした食事にして良いのでしょうか。基本的には良いことと言えますが、気を付けたい点があります。

糖質制限ダイエットではタンパク質の極端な過剰摂取に注意

実は、糖質制限ダイエットでは、糖質(炭水化物)を減らす代わりに脂質やタンパク質を増やして、生きるのに必要なエネルギー量を確保するという方法が取られます。この記事の読者の中には、糖質制限をしているためにタンパク質に注目されている方がいらっしゃるのではないでしょうか。

タンパク質はエネルギー源としても体内で利用できるのですが、摂り過ぎると腎臓に負担をかけてしまいます。健康診断で腎機能の項目(蛋白尿、クレアチニン、eGFRなど)が良くない人はタンパク質を増やすようなダイエットは控えてください。

健康な人でも、タンパク質は摂取エネルギーの20%程度(タンパク質1gで約4kcal)までに抑えておくのがオススメです。腎臓に負担をかけないためにも、水分はいつも以上にしっかり摂るようにしましょう!

筋トレではタンパク質(プロテイン)だけでなく、糖質の補給も!

読者の中には筋トレを頑張っており、筋肉の材料としてタンパク質をたくさん摂取しようとしている方もいるかもしれません。それは良いことです。

強いて言えば、運動前には少し糖質(炭水化物)を取っておくようにすると、筋トレなどの運動により体内のタンパク質(筋肉)が分解されにくくなります。空腹で運動するのは、筋肉を育てるという観点からはあまり良くないことです。また、運動後1時間くらいのタイミングでタンパク質(アミノ酸)を供給してあげると、既存の筋肉が壊されずに新しい筋肉を作り出す環境が整います。

特に、必須アミノ酸のロイシン、イソロイシン、バリン(この3つを合わせてBCAA)は、筋肉づくりを促進すると言われています。これらのアミノ酸を含む食品やプロテインを活用してもいいでしょう。

筋肉量が増えれば、基礎代謝量(生きているだけで消費するカロリー)を増やすことができ、ダイエットに有利になりますよ!

タンパク質を多めにしても、他の栄養素も忘れずに

このように、タンパク質をたくさん摂りたいという動機は人それぞれでしょうが、タンパク質だけ摂っていればOKということではありません。

何かと悪者にされがちな糖質は、体内ですぐに使えるエネルギー源として働くことで筋肉の分解を防いでくれます。脂質のなかには、体内で作り出せないので食事から摂らねばならないものや、中性脂肪を減らしてくれる効果をもつもの(魚油など)があります。

タンパク質を多めに摂ることは基本的には良いことですが、あまりに偏り過ぎると不都合の方が大きくなります。したがって、冒頭のクイズで出した選択肢③「栄養バランスが良くない」も正解です。

タンパク質ダイエットの落とし穴!クイズ③の答え
タンパク質ダイエット中のふとし君、今日のランチはサラダチキンだけです。 それを見た教頭先生は微妙な顔をしたのですが、何が問題なのでしょうか?
  1. ①良質なタンパク質ではない
  2. ②塩分の摂り過ぎになる
  3. ③栄養バランスが良くない ⇒○:糖質(炭水化物)や野菜も一緒に摂りたい
    ※糖質制限時でも、タンパク質に偏り過ぎるのは避けましょう
    ※筋トレ前には少し糖質を補給しておくと、筋肉の成長に役立ちます

そういう、栄養バランスがとれた食事の選び方を他にも教えてくださいっ!

ふとし君

そうねぇ…いくつか献立を考えてみましょうか。

ダイエット小学校
教頭先生

タンパク質ダイエット中のおすすめ献立

朝食
  • 主食:玄米ご飯(orもち麦ごはん)
  • 主菜:焼き魚(サバ、鮭、アジなど)
  • 副菜:豆腐と野菜たっぷりのお味噌汁
    ⇒魚と豆腐で良質なタンパク質を摂り、野菜(食物繊維)でカロリーダウン
    ⇒あっさり和食で血糖値の上昇が穏やか、腹持ちが良い
昼食:コンビニで買う場合
  • 主食:糖質少なめのパン(全粒粉、ライ麦など茶色っぽいパン)
  • 主菜:サラダチキン
  • 副菜:ゆで卵やツナの入った野菜サラダ、ヨーグルト
    ⇒野菜サラダからゆっくり食べ進めると、意外とお腹いっぱいになる
昼食:外食する場合
  • 主食:ライス(orあれば、糖質少なめのパン)
  • 主菜:鶏むね肉のソテー(わさび醤油など、脂質少なめのソースで)
  • 副菜:ほうれん草のおひたし
    ⇒外食時は単品ではなく、なるべく定食メニューを選ぶ
    ⇒小鉢などで野菜を足すようにする
夕食
  • 主食:玄米ご飯(orもち麦ごはん)
  • 主菜:大豆ハンバーグ
  • 副菜:きのこソテー、ほぐし鶏ささみとキムチ和え
    ⇒夕食はなるべく軽めに、お酒を飲む人は主食をカット

サラダチキンに全粒粉パンや野菜スープとかが付いていれば合格だったのよ

ダイエット小学校
教頭先生

そうだったのか…(そっちの方がお腹に溜まるな)

ふとし君

いくらダイエット中といっても、1食ごとに主食(パン)、主菜(チキン)、副菜(野菜)を揃えるようにしましょうね

ダイエット小学校
教頭先生

タンパク質をダイエットに活用するポイント

ちなみに、タンパク質が多い食事はダイエットにとって少し有利である理由がもう一つあります。

食後は身体がポカポカしますよね。温かいものを食べたからという理由もあるのですが、実は食事を摂ると体内で栄養素が分解され、一部がエネルギーとして消費されます。この影響で身体が温まる(=代謝量が増える)のです。このことを専門用語で「食事誘発性体熱産生」と言います。

いわば「食べただけで消費できるカロリー」である食事誘発性熱産生の多寡は、実は食べた栄養素により変わります。タンパク質のみの場合は摂取エネルギーの約30%、糖質のみでは約6%、脂質のみでは約4%と言われています。タンパク質の多い食事は、食事誘発性体熱産生の観点からは有利と言えます。

さらに、食事誘発性体熱産生はよく噛んで食べることや、身体の筋肉を増やすことで高まると言われています。つまり、運動した後に、タンパク質の多い食事をゆっくりよく噛んで食べるのが、タンパク質ダイエットのとても重要なポイントなのです。

参考までに、今回のアドバイスをざっくりまとめておくわね!

ダイエット小学校
教頭先生
タンパク質ダイエットの鉄則:筋トレ後に、良質なタンパク質が多めで、栄養バランスのよい食事を、よく噛んで食べる